実は働く妊婦に冷たいアメリカ企業のリアル 企業の配慮を促す法律もない
妊娠した女性への不当な扱いは、アメリカの企業でよく見られることではある。昇進や昇給を認めない企業もあれば、産休に入る前に解雇する企業もある。だが、重労働に従事する女性が妊娠中に不当な扱いを受けると、さらに大きな危険が生じる可能性がある。
ニューヨーク・タイムズ紙は、上司に援助を求めたが拒否されて、その後流産や早産、死産に至ったという労働者に関して、裁判記録やほかの公的な書類を数千ページにわたって検証した。彼女たちは、重いマットレスを裏返したり、大きな箱を運んだり、荷物の積まれたカートを押すなどの仕事から、少し離れたいと願っていた。
40年前から変わらない法律
この女性たちが働いていたのは、病院や郵便局、空港、食品店、刑務所、消防署、レストラン、医薬品メーカー、ホテルなどだった。
しかし、企業が妊娠中の女性への配慮を拒否することは、多くの場合、完全に合法である。連邦法によると、たとえほかにもっと軽い仕事があって、医師が書面でそうした仕事に移るよう勧めたとしても、企業は必ずしも妊娠中の女性の仕事を調整する必要はない。
妊娠中の女性を保護するための連邦法は、40年前に制定された「妊娠差別禁止法」が唯一のものだ。同法によると、企業が妊娠中の労働者に配慮しなければならないのは、ほかに「同様の能力または能力の欠如」がある労働者に対して、すでに同様の対応をしている場合だけである。
したがって、誰の仕事も軽減していない企業では、妊娠中の女性の仕事も軽減する義務はないということになる。前出の倉庫のオーナーであるXPOロジスティクスも、そうした運営の仕方だったと従業員らは話す。