アベマTVが狙う「オオカミくん」のスキマ効果 中国アラサー女子もキスシーンに夢中?

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話によると、そもそもテレビ朝日とアベマTVでは出演者のブッキング方法に違いがあるようです。アベマTVの制作部にはテレビ朝日本体からの出向者もいますが、決裁フローについてはインターネット企業であるサイバーエージェントのやり方が踏襲され、速さが重視されています。テレビ朝日がこれまで培ってきたネットワークと、サイバーエージェントの決裁フローがうまく掛け合わされている様子がうかがえます。

若手俳優や女優らを抱える事務所にとっても、アベマTVの恋愛リアリティ番組は「売り込みチャンスの場」として、捉えられています。「『オオカミくんには騙されない』ではシーズン1に比べると、より多くの人材が集まるようになりました。次の世代のトップ俳優、女優として羽ばたけるような方が続々とご出演しています」(谷口氏)

若者の「直接的な欲求」をドラマに

世界100か国からトレンド番組が集まったカンヌのマーケット会場にアベマTVは次の金脈を探しにきたことも目的のひとつにありました。恋愛リアリティ番組に続いて、この1年は完全オリジナルドラマ制作にも力を入れ始めています。

仏カンヌのMIPCOM会場に来場したサイバーエージェント執行役員AbemaTV編成制作本部制作局長の谷口達彦氏(筆者撮影)

「オールターゲットのドラマが多いなか、アベマTVが作るドラマは若者向けに振り切ります。若者の中だけで起きている潮流や事象をごまかさないで訴求できることがアベマTVの強さだと思っています。金、恋愛、友情、夢など、若者の直接的な欲求をそのまま扱うドラマ作りにこだわっていきます」(谷口氏)

そんななか、アベマTV 開局2周年記念オリジナルドラマとして早くも制作され、見逃し配信中の番組に『会社は学校じゃねぇんだよ』があります。ベンチャー起業の奮闘をよりリアルに描いたリベンジサクセスストーリーのドラマです。サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏の著書『渋谷ではたらく社長の告白』(幻冬舎文庫)をベースに、鈴木おさむ氏が脚本を手掛け、主演は三浦翔平さんです。

ベンチャー起業のリアルにこだわった三浦翔平(左)主演ドラマ『会社は学校じゃねぇんだよ』(写真:アベマTV)

もてはやされるイメージのあるベンチャー起業家ですが、本作では寝る間も惜しんでもがき苦しむ姿も描き、年収は300万円台、10万円だった貯金残高がいきなり100億円になるような過程を熱くドラマ化しています。ベンチャー社長からも支持を受け、「起業するなら見るべきドラマ」として評価を受けているとか。

新しいメディアだからこそ勢いでできることも大いにあるでしょう。でも、それだけではなく、したたかに「地上波のスキマ」を見極めながら番組を企画しているようにみえます。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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