●食事の時間が怖くなり、食べること自体に否定的な感情を持つようになる。それは生きることの否定にもつながりかねない
●しかられ続けることで自己肯定感が持てなくなり、自分はダメな人間だと思うようになる
●強制的に食べさせる先生や親に対して恐怖感を持つようになり、それが他者不信感につながることもある
●毎日苦しみ続けることで子どもらしい快活さがなくなり、鬱的な状態になる
こうならないためには、どうしたらいいのでしょうか? まず食事の量についてですが、これは極めて個人的かつ生理的なものであることを理解しておく必要があります。大人にも、小食の人もいれば大食の人がいるように、子どもたちも百人百様なのです。たとえ同じ学年でも、体の大きさ、運動量、代謝量などには個人差があり、当然、必要なカロリー量も違ってきます。
基礎代謝量は遺伝子レベルで決まっている
川崎市立看護短期大学の西端泉教授によると、基礎代謝量(体を動かさなくても消費するエネルギー量)だけをとっても、同じ年齢、性別、体格で最大20%程度の個人差があるそうです。しかも、この基礎代謝量の個人差を生じさせる遺伝子がすでに特定されているそうです。つまり、基礎代謝量は遺伝子レベルでほぼ決まっているのです。
これに活動代謝量(体を動かすことで消費するエネルギー量)を加味すれば、同じ学年の子どもでも代謝量はさらに大きく違ってきます。しかも、同じ子であっても、その日の活動量、体調、精神状態などによって代謝量は大きく変化します。ですから、一律に食べる量を決めることなどやってはいけないことなのです。「給食の量はその学年の子にふさわしい量になっているのだから残してはいけない」などと言って強制する先生もいますが、これは上記の事情を無視した暴論と言わざるをえません。
もちろん、子どもたちの食が進むよう、先生や親にできることはしてあげる必要があります。規則正しい生活をする、運動量を増やす、高カロリーな間食や清涼飲料水をやめるなどです。こういったことはぜひともやらなければなりません。でも、それ以上のこと、してはいけないことはしてはいけないのです。
次に食事の質、つまり好き・嫌いの問題です。これについても、次のように、先生や親にできることはしてあげる必要があります。
2. 食事を明るく楽しい時間にする
3. 食材の栽培や調理に子どもを参加させる
4. 食材の栄養などについて子どもを啓発する
このように、できることはしてあげてください。でも、それ以上のこと、つまり強制的に食べさせるようなことはしてはいけません。冒頭で紹介した斉藤さんや林さんのように、嫌いなものを無理に食べさせられたことで、大人になってからも食べられなくなるということが実際にあるのです。逆に、そういうことをしなければ、大人になったら自然に食べられるようになるということもあるのです。私も子どもの頃、マーマレードが食べられませんでしたが、20歳ごろに試しに食べてみたらおいしかったので、それから食べられるようになりました。
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