「バイク」のヤマハが”クルマ”に乗り出す 世界展開も見据えるヤマハの深謀遠慮

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バイクだけの事業展開に”危機感”

ヤマハが4輪車への参入を目指す背景には、趨勢的に2輪車事業が先細りになっていくという危機感がある。

新興国ではまだまだパーソナルモビリティの主役は2輪車だが、これらの国々が経済成長を遂げれば、必然的に需要は4輪車に移る。実際、ヤマハがメイン市場とする東南アジアでは、すでにそうした兆しが現れている。

2輪分野ではインド勢を筆頭とする新興国メーカーの台頭が著しく、コスト面ではかなわない。技術力・ブランド力ではまだまだ差は大きいが、それも徐々に縮まってくる。

ヤマハの4輪展開はどれだけの存在感を持つ事業になるのか

つまり、4輪への需要移行と新興国メーカーの挟撃の中で、新たな道を探らざるをえないという事情がある。日系2輪メーカーであるホンダ、スズキは以前から4輪が主力、川崎重工業は総合重機メーカーだ。2輪が主力なのはヤマハだけ。とはいえ、今から4輪事業に本格進出することは非現実的だ。 

そうした中で見出したマレー社との共同開発は現実的な選択肢といえる。同社は従来型の自動車産業に異を唱え、小さな投資で都市の交通環境に見合った自動車を生産するというコンセプトを掲げる。マレー社によれば、同社の生産システムは、従来の自動車工場に比べ2割の投資規模で済むという。マレー社の車体生産の仕組みは、4輪車よりむしろ2輪車のそれに近く、ヤマハとの親和性も高いといえる。

カギは性能と価格のバランス

都市部の近距離移動用途として、現在のような大きな自動車を用いることはムダが多いと、かねがね指摘されてきた。その代案として、超小型自動車の必要性も唱えられ、一部で市場導入の取り組みも行われている。だが、既存の自動車に比べると小さくて不便なうえ、所有欲も満たされないにもかかわらず、価格は2輪車よりも大幅に高いことから、市場で広く受け入れられた例はいまだない。

 今後の市販化にあたって、世界各国の市場特性に合わせて車格やパワーユニットの組み合わせは変えていくことになるだろう。既存の超小型車が抱えてきた性能と価格設定のアンバランスを解消できるかが、成功へのカギとなる。

(撮影:鈴木紳平)

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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