仮想通貨のレバレッジは4倍以下にすべきか 仮想通貨交換業協会が自主規制団体に認定

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仮想通貨の証拠金取引をもう一段掘り下げると、自主規制ルールではレバレッジの上限を4倍(1年間は会員自身が決定する水準でも可とする時限措置有り)と設定している一方、有識者による「仮想通貨交換業等に関する研究会」では、4倍よりもレバレッジを引き下げるべきとの議論もあると報じられている。

2018年、10倍に引き下げるべきか否かが議論された外国為替証拠金取引(FX)の現在の最大レバレッジは25倍である。1日で10%強動くことが珍しくない仮想通貨の高い変動率(ボラティリティ)を考慮すると、FXよりもレバレッジを引き下げるロジックは理解できる。

ただ、高いボラティリティを好む投資家は、新興国投資からFX、そして、仮想通貨へと投資対象を次々と変えてきた経緯があることから、仮想通貨のレバレッジを引き下げた場合、投機的な資金が流出するかもしれない。つまり、ホットマネーがいなくなることで面白味に欠ける市場にはなるかもしれないが、健全な価格形成ができるとの見方もできそうだ。

「ロスカット」規定の整備で利用者の使い勝手は改善

もっとも、自主規制ルールで設けた「ロスカット」の規定を各業者が整備できれば、利用者の使い勝手は大きく改善することだろう。レバレッジ引き下げの議論も大事だが、やはりまずは自主規制ルールの遵守が先である。

正式に自主規制団体が誕生したことから、多少なりとも信頼は回復できたのではないかと考えるが、1月のコインチェック、9月のテックビューロ(Zaif事業)と大規模な流出問題が今年2回も発生したことを考えると、この業界の信頼回復はまだまだ遠い。ハッキングして盗んだ人間がいちばん悪いのは当然のことだが、そうした人間が近寄ってこないようにする努力(アンチ・マネー・ロンダリングなど)が仮想通貨業界には必要だ。

なお、9月のテックビューロについては事件後の処置があまり報道されていないが、同社は筆者も経営に携わるフィスコ仮想通貨取引所(FCCE)へZaif事業を譲渡することについて、各Zaif利用者から承諾を得る手続きを10月22日よりスタートした。

各利用者はZaifにログインして説明文を読み、3カ所の確認事項へチェック入力後に「異議なく承諾する」ボタンを押下すると、FCCEへの事業譲渡を承諾したことになる。これによってハッキング被害についてもFCCEから補償を受けることができる。

逆に言えば、事業譲渡を承諾しない利用者とFCCEとの間には、一切の権利義務関係は生じず、補償対象にならないことに注意が必要だ。仮にFCCEへの事業譲渡を承諾せず、テックビューロとの利用契約を維持したいという選択をした場合、解散が予定されているテックビューロの残余財産から債権に応じた額が分配されることになる。

だが、残余財産は補償すべき額に満たない可能性もある。また、事業譲渡の実行日となっている11月22日以降、FCCEへの事業譲渡を承諾しないZaif顧客については、Zaif口座で仮想通貨の売買ができなくなる可能性が高いという点も意識しておきたい。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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