北朝鮮人が恋い焦がれる意外すぎる「職業」

医者の地位はあまり高くない

当時は商品が少しばかり盗まれたとしても、それが大々的に行われているのでない限り見逃されるのが普通だった。販売員も知恵を働かせていた。たとえば、計りの目盛りをごまかすのはよくある手口の1つで、このようにして販売員は商品をくすねたり、公的に定められた顧客への割当量を微妙にちょろまかしたりしていた。

ただ、北朝鮮経済が部分的に市場経済へと移行したことで、物不足は緩和。販売員には痛手となっている。

運転手はうま味の多い職業

運転手が憧れの仕事になっているのも、追加の現金収入があるからだ。北朝鮮では移動の自由が厳しく制限されており、一般の国民が自分の住んでいる市や郡から出るのは難しい。

北朝鮮でほかの場所に行くには、かなりの書類手続きに加えて、袖の下が必要になるということだ。だが、運転手は通常、北朝鮮中を問題なく移動することができる。加えて、これは当然の話だが、運転手には自動車を使う権利がある。自動車は農村部では貴重だ。

運転手は現金が入ることなどから、北朝鮮人にとってはあこがれの職業だ(写真:北朝鮮ニュース)

このように自動車を使える権利を持ち、各地を移動できる運転手になれば、地域間の価格差を利用した転売で一儲けするチャンスが転がり込んでくる。北朝鮮では現在でも地域によって物価が大きく異なるため(かつての物価差は相当なものだった)、商品の転売でボロ儲けできる。しかも、乗客を乗せて運賃を稼ぐ機会はつねにあり、これもけっこうな収入になる。

過去20年で北朝鮮経済が部分的に市場経済に近づいてきたことも、運転手にはプラスとなった可能性がある。国内を移動する人々の数は増えており、貨物の輸送量も大幅に増えた。民間では専門の物流業者も現れてきているが、状況は昔とたいして変わっておらず、運転手は今でも尊敬される職業であり続けている。ちなみに、女性はごく最近まで運転免許を取得することができなかった。

もちろん北朝鮮は変化しており、特権的な職業のイメージも今後は西側先進国のそれに近づいていくだろう。しかし、現実にそんな日がやってこない限り、北朝鮮の「しがない医者」が「立派な運転手」に優越感を抱くなどということは、ちょっとありえない話なのである。

(文:アンドレイ・ランコフ)

筆者のアンドレイ・ランコフ氏は韓国・国民大学教授。旧ソ連のレニングラード国立大学を卒業後、同大学院で博士課程を修了。北朝鮮研究の世界的権威で、北朝鮮の金日成総合大学に留学した経験もある。北朝鮮ニュース取締役。
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