JR東海が大人気イベントで「お詫び」のワケ 車両基地や工場を無料公開するメリットは?

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来場者が多かった理由は、毎年、7~8月に2日間で開催されるイベントが、今年は9日の1日だけになったことだ。2日間で3万人以上を動員するイベントというから、今年は1日に3万人以上が集中したかもしれない。3連休の中日という好日でもあった。真夏ではなく、風の心地よい9月の開催も来場者を誘発しただろう。

なぜこの日程になったのか。理由をJR東海に聞くと、9月開催は「前年までの酷暑の時期の開催を顧みて」。1日だけになった理由は「運営の都合上」とのことだった。来場者への配慮や車両の整備点検日程との兼ね合いとはいえ、結果的に時期は裏目に出てしまった。

筆者が見るかぎり、スタッフの皆さんはとても頑張っていた。残暑が残る快晴の日、ずっと日なたで声を上げて案内したり、場内を整理したり。特に迷子札は秀逸だ。新幹線のイラスト入りで記念品にもなる腕輪で、これなら子どもも喜んで着用する。広大な場内で迷子放送もあったけれど、同じ案件が繰り返されることは少なかったから、1件あたりの解決は早かったはずだ。

新幹線の整備工場という現業部門を停止して、来場者を迎え入れる準備をするのは大変なことだ。さらに案内役のアルバイトを雇い、警備員も多数動員し、当日の係の動きの段取りも考える。それでいて、来場者は入場無料である。混雑するコーナーもあったけれど、それはこの手のイベントでは当たり前のこと、という認識が筆者にはある。比較的自由に見学できる場所も多く、80人単位で乗れるトラバーサー体験は待ち時間も少ない。遊びに来た側としては、ただ感謝しかなかった。

これだけ苦労を伴ってもクレームは来る。鉄道会社はいったい何のためにイベントを開催するのだろう。沿線の人々に鉄道を親しんでもらいたい。ファンサービス。鉄道の現場を理解してほしいという意味までは想像がつく。ほかにはどのような理由があるのだろうか。

「現場の職員がお客様の笑顔を見る機会」小田急電鉄

10月20日、21日に海老名駅周辺で「小田急ファミリー鉄道展 2018」を開催した小田急電鉄に聞いた。同イベントは1999年から実施しており、台風で中止となった2010年を除いて18回目だ。開催の目的は「社会貢献活動の一環として、鉄道事業の理解促進、小田急ファンの獲得・醸成」で、その目的は当初から現在まで変わっていない。

鉄道ファンにとっては、普段立ち入ることができない車両基地に入るワクワク感が魅力。車両を近くで見たり、撮影したりできる。今年は引退したロマンスカーLSEの展示が目玉だった。

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