「人を不愉快にする手紙」書く人に欠けた配慮 「忖度」はビジネスレターでも役に立つ

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といって次の文例Bのように、あまり露骨な表現で相手の問題点を指摘してしまうと、意図するところははっきりと相手にわかるものの、今度は相手の不興を買ってしまいそうです。

【文例B】
今日ではネットワークは社会インフラとなり、モバイルのみならずスマホからでも、直接システムにアクセスし、受発注管理、生産管理、在庫管理、顧客との情報交換、決済処理等を行う会社が増えております。

貴社におかれましても、業務の効率化を進められていることはよく存じ上げておりますが、基幹システムがひと世代前の仕様であるため、今日のシステム環境から見ますと十分なアクセス対応ができる設備ではありません。

長年お取引いただいております私どもから見ましても、このままでは、システムの遅れによって他社の後塵(こうじん)を拝する恐れもあるように思えます。

ぜひこの機会に、基幹システムの全面リニューアルをおすすめいたします。できる限り、貴社のシステムのスペック向上に尽力いたしたいと考えております。

これでは「脅迫文か」とさえ受け取られかねません。

遠回しに言っては伝わらず、ストレートな表現では角が立つ。そういうときに効果を発揮する手法はないでしょうか。それが、昨年から急に目にする機会が増えた言葉、「忖度」です。

文章においても「忖度」が役に立つ

相手の気持ちをおもんぱかって、言われなくてもこちらから進んで配慮する「忖度」をベースに文章を構成すると、受け取ったほうも「こちらのために言ってくれている」と好意的に解釈できますから、欠点を指摘されてもそれほど不愉快にはなりません。忖度をベースすると先述のビジネスレターも、下記文例Cのようになります。

【文例C】
今日ではモバイルのみならずスマホからでも、直接システムにアクセスし、受発注管理、生産管理、在庫管理、顧客等との情報交換、決済処理を行う会社が増えております。

貴社におかれましても、こうした環境に対応するため業務の効率化を進められておられることはよく存じ上げております。

長く業界をリードしてこられた貴社は、システムでも常に先進的であり、システム導入当時は他社と比較しても群を抜いておりました。ところが私どもが見るところでは、貴社の基幹システムの仕様は、今日のシステム環境に十分な対応をするにはややスペックに欠けるところがあるようです。
時代の先頭を走る企業のジレンマとでも申しましょうか、後発の企業のほうが導入する設備は新しくなりますから、先行企業は不利となります。しかし、業界のリーディングカンパニーである貴社は、システムでも他社の手本であるべきと存じます。
ぜひこの機会に、基幹システムの全面リニューアルを私どもにお任せいただけないでしょうか。どうかお役に立てる機会を賜りますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

システムの老朽化は、顧客も痛いほどわかっているはずです。ですからこの文面では、そこは過度に刺激せずに先方の心の内をおもんぱかり、一方のリーディングカンパニーとしてのプライドをくすぐっています。

先方の事情とプライドを忖度した結果が、上記のビジネスレターということです。

次ページときには「言い切る覚悟」も必要だ
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