「メイド・イン・ジャパン神話」の理想と現実 国産シャツからベトナム縫製に転換した背景
ベトナムへオーダーメイドシャツの生産拠点をシフトしてから、知れば知るほどオーダーメイドに向いた生産環境を整えている国でした。親日的で勤勉な国民性で、アセアン諸国のため関税が優遇される場合もある点に加え、もっとも大きいのが労働人口の若さです。国全体の平均年齢30歳(日本46歳)。
労働市場に若年層が多く、日本よりも採用に困りません。手縫いによる「ボタン付け」といった技術も、彼らに容易に継承させることができます。
この国は服作りにおいては長い伝統と技術を持っています。例えば、民族衣装であるアオザイ。実は、既製品の専門店は現地にほとんどありません。店を訪れても布しか置いておらず、布地から個人個人に合わせて縫うのが当たり前な、いわば「総オーダーメイド商品」なのです。家々で自前のアオザイを縫うのが当たり前の文化がつい最近まであったのです。
私たちが現在協業している工場も、元々欧米や日本のオートクチュールの生産を請け負ってきた経緯があります。
品質を担保するのであれば日本製にこだわる必要もない
ベトナムでオーダーメイドシャツの生産を進めて思うのは、「メイド・イン・ジャパン」の名前が果たしてどこまで必要なのかという点です。
自動車や赤ちゃん向けの食品など生命にかかわる商品については、特にメイド・イン・ジャパンの『 安心・安全 』ブランドは世界的なネームバリューがあると思います。しかし、服について果たして消費者がそこまでこの名前にこだわりを持っているのか。
特にアパレル業界は冬の時代が続き、多店舗展開して画一的な商品を売るといった、これまでの常識は通用しなくなってきています。前述の縫い目の細かさなどに表れる「中身」にこだわった商品をコストを抑えてベトナム製で提供することもひとつの選択肢です。
モノづくり大国日本において、国産ブランドの価値が完全になくなることはないでしょう。もちろん、アパレル業界もそれは同じです。しかし、特に品質が求められるオーダーメイドの世界だからこそ、「メイド・イン・ジャパン」ブランドにこだわらない「商品自体のこだわりや魅力」こそが、求められると考えています。
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