「世界同時株安」の裏に潜んだ5つの重大懸念 成長要因は残るがリスクも顕在化してきた

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4. 過剰なインデックス投資への懸念

ここにきてアメリカの投資信託市場およびETF(上場投資信託)市場に異変が起きていることがクローズアップされている。モーニングスターによれば、アメリカの投資信託およびETFへの純資産流入額は、2018年1~9月のデータで、前年同期の5172億ドルから2817億ドルに減少。ざっと46%のマイナスになったそうだ。要するに、ファンドやETFに資金が入ってこなくなってきていることになる。

特に注目されているのが「指数」に連動するように設定されているインデックスファンド、そして指数に連動するように組成されているETFなど、年金運用などでよく使われる「パッシブ運用型」商品への新規の資金流入が大きく減っていることだ。2018年1~9月の純資金流入額は3294億ドルで、前年同期比35%も減少している。インデックスファンドやETFに投資資金が入ってこなくなったということだ。

現在の株式市場の売買高ランキングでは、ETFがつねに上位を占めている。ETFが買われれば、そのまま株式や原油、金といった投資対象の市場価格も上昇するということだ。相場全体が大きく買われる。

近年の金融市場が好調に推移したのも、数多くの投資家がETFに資金を投入したことと大きなかかわりがあると言われる。そのETFに資金が入ってこなくなれば、市場全体が下落することになる。場合によっては、インデックスファンドやETFに売りが殺到してマーケットそのものがストップしてしまう可能性もある。

とりわけ日本のように、中央銀行である日本銀行がETFに大量の資金を投入して、株式市場全体をカサ上げするような政策をとっている市場では大暴落どころかマーケットの凍結もありうる。

5. ヘッジファンドによる利益確定

長年、金融市場に携わっている人間であれば、この10月中旬の株価暴落のきっかけが何であるかはすぐにピンとくるはずだ。莫大な資金を投入することで知られるヘッジファンドの多くが11月末を決算日として設定している。

ヘッジファンドの場合、解約を申し込んでから決済まで45日間程度かかるため、投資家が11月の決済日に利益確定をしたいと思えば、この10月15日までに売り注文を出す必要がある。ブラックマンデーにしても、株価暴落に10月が多いのはヘッジファンドの11月期決算と少なからず関係があるからだ。

むろん、ヘッジファンドの利益確定だけでここまで大きく下がることはないのだが、ヘッジファンドの中にはプログラム売買をしているファンドが多い。株価などが一定のレベルを超えた瞬間に、一斉に売りが膨らむことが多い。ヘッジファンドなどリスクを取って投資するマネーは、どうしてもマーケットのボラティリティ(変動幅)を増幅させる。10月に暴落が多い原因のひとつと言われる。

中間選挙、どちらが勝っても株価は下落する? 

さて、問題は今後の展開だが可能性は無限にある。とりあえず、ここで下げ止まるとしてもさまざまなリスクが顕在化していることがわかった以上、これまでのように一本調子での上昇は難しいと考えたほうがいいかもしれない。

とりわけ、今回の株価暴落の原因をすべてFRBに押し付けようとするアメリカのドナルド・トランプ大統領の発言やツイッターは、今後の市場にも少なからず影響を与えるはずだ。日本と違って、アメリカの中央銀行は独立性の高い組織であるため、金利はきちんと上昇していくはずだ。

株式市場に限らず金融市場全体が「リスクオン」だった状態は、しばらくの間「リスクオフ」になることは避けられないだろう。これまで金融マーケットは、過剰流動性が莫大なリスク資産を吸収してきた。その「リスク資産バブル」がここにきて崩壊をはじめていると考えたほうがいいだろう。

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