「世界同時株安」の裏に潜んだ5つの重大懸念

成長要因は残るがリスクも顕在化してきた

実際に、ITバブルが崩壊した2000年の米国債利回りは6%を超えていたし、リーマンショック前の2007年でも5%を超えている。下落率が史上最大だったブラックマンデー(1987年10月19日)の利回りは10.25%だった。

FRBが、9月のFOMC(連邦公開市場委員会)で示した今後の金利引上げの目安によると、年内1回、2019年に3回、2020年に1回の計5回としている。このフォワードガイダンス(中央銀行が示す今後の金融政策の指針)どおりに実行されれば、米国債の利回りは2020年には3.4%に達するとみられている。

言い換えれば、今回の暴落を金利上昇のせいとするのはちょっと早計のような気もする。米国債の利回りが5%に達するにはまだ時間がかかりそうだ。

とはいえ、 世界の中央銀行はこの10年、限りなくゼロに近い低金利と非伝統的な量的緩和を繰り返してきた。そうした背景を考えると、10年物米国債の利回りは3.5%がターニングポイントだとする考え方が市場ではコンセンサスになりつつある。

2. 貿易戦争への懸念

アメリカのトランプ政権最強の経済政策は、言うまでもなく世界中に仕掛けた貿易戦争と言っていいだろう。とりわけ、中国への強硬な姿勢が目立つ。この貿易戦争の将来を悲観して今回、株価が下落したとすれば、つねに強気の姿勢が目立つ株式市場の対応としてはちょっと違和感がある。ゴルディロックス(適温相場)が続くのを嫌がる投資家は少ないはずだ。

株価さえ上がればみんながハッピーな適温相場では、貿易戦争が悲惨な結果をもたらすことはわかっていても、 実際にその影響がファンダメンタルズとして表れてこないかぎり、投資家が株を売るとは考えにくい。貿易戦争の行く末が見えない中で、株価暴落は説明がつかない、ということだ。

量的緩和政策のツケをそろそろ支払わなければいけない

3. 過剰流動性=量的緩和、巻き戻しヘの警告

いま世界の投資家が最も心配しているのが、この過剰流動性の問題だろう。2008年のリーマンショック以降、景気後退からの脱出法として世界中の中央銀行がそろって金利を引き下げ、莫大な金額の量的緩和政策を実施した。この10年間の量的緩和政策のツケをそろそろ支払わなければいけない時期にきているわけだが、金融緩和のツケの大きさにマーケットが気づき始めたと言っていい。

とりわけ、FRBが昨年10月から始めている「バランスシート縮小」は、ここにきて徐々に株式市場に影響を及ぼしつつある。中央銀行のバランスシート縮小は、金利上昇に拍車をかける。FRBは、バランスシート縮小の規模は明らかにしていないが、今後もバランスシート縮小は続くはずだ。

過剰流動性は、新興国のドル建て債務となって経済成長の重しになっている。世界全体の債務(借金)はいまや164兆ドル(IMF調べ、1京8500兆円)に達しており、これらのマネーは株式市場やドル建て債務となって市場に流通してきた。

株式市場にとって、過剰流動性は株価を押し上げるが、いったんマネーの流れが逆流して流動性が細くなると、株式市場は暴落し、新興国のドル建て債務はデフォルト(債務不履行)に陥ることになる。最近のFRBのバランスシート縮小などによってドル不足が指摘されているが、今回の世界同時株安はこうした過剰流動性の逆流に対する警告なのかもしれない。

ちなみに、トランプ政権が推奨したアメリカ企業の海外滞留資産をアメリカ国内に還流させる動きもピークを越えたと言われている。2018年だけで4000億~5000億ドル還流されると見込まれていたが、すでに上半期だけで3300億ドルの還流が済んでいるそうだ。しかも、還流金の大半は債務返済に消えたと言われる。過剰流動性の巻き戻しは、徐々にだが確実に世界中で進んでいるわけだ。

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