株価は2019年半ばにかけて大きく下落する 日経平均は当初予想より早く天井をつけた?

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今回の、日本株を含む世界市場の動揺は「アメリカ発」で波乱が生じ、それが日本株も押し下げた、という形だ。だが短期的には先週の米株安は冒頭でもふれたように行き過ぎの面があり、終値ベースでは、10月11日(木)が当面の株価の底に近い(目先、不安心理から株価が一段と下振れして、さらに11日の安値を更新したとしても、それほど深くはならない)と考える。

今回のアメリカ市場波乱の要因としては、米長期金利の上昇が挙げられている。後述するように、中長期的には、さらなる金利上昇がアメリカ経済の重石になると懸念しているが、ごく直近ではそれほど10年国債利回りが跳ね上がったわけではない。8月に2.8~2.9%で推移していたものが、一時3.2%を超えた程度だ。今年5月に3.1%超となったこともあったため、金利上昇が足元の景気などにとって深刻である、というより、単に株を売る口実とされた感が強い。

「投資家の慢心」+「アルゴ取引」で下げが加速?

とは言うものの、アメリカでは金利上昇を受けて、投資家が身を引き締めたことも事実だろう。最近までのアメリカ株式市場では、「企業収益が増益を続けられるくらい景気は強いが、金利が上がらないくらい景気は弱い」といった、都合のよい「適温相場」(景気が熱すぎないし冷たすぎない)というシナリオに、投資家が慢心していた。そうした投資家の驕りが、ちょっとした長期金利の上昇という反撃をくらった、という面はあろう。

これに加えて、いわゆるアルゴリズム取引による、アメリカ株式指数の先物売りが、株安を加速した可能性がある。アルゴリズム取引は、ある計算式に基づき、機械的に売買する取引手法を指す。今回の株安の背景には、何らかのテクニカル的な観点からの売り(たとえばニューヨークダウ工業株指数が、50日移動平均線を割り込んだため、売りを出した、など)があったと言われている。

また、このアルゴリズム取引では、VIX指数(いわゆる恐怖指数)に関連した売りも盛んに行なわれた、との声を聞く。VIX指数は、ご存じの方も多いと思うが、米S&P500指数のオプション価格から算出した数値で、投資家が想定している株価指数の変動率を示すものだ。その数値が高いほど、投資家が全体として市場が荒れると考えていることを表す。このVIX指数が、7~9月は概ね11~15で推移していたものが、10月11日(木)には、一時28.84まで跳ね上がった。これがVIX上昇→株式指数先物売りというアルゴリズム取引を発動させ、やはりアメリカ株の急落につながった、という観測があるわけだ。日本市場でも、日経VIの上昇が、同様に先物売りを招いた、という見解がある。

それでも、VIX指数の近年の最高値は、2011年秋のギリシャ発の欧州財政懸念時の約40であった。さらに2008年11月(リーマンショック直後)には約73を記録しており、騒ぐほどの上昇とは言い難い。

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