アニメが観光産業を革新する武器になるワケ 「らき☆すた」の聖地で起きたこと

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そのように来訪者が増え始めると、地域の人々が巡礼者に気付き始める。深夜に放送されるアニメの場合、地域の人々は作品を見ていないことがあり、そもそも、ロケ地になっているにもかかわらず作品そのものがその地域で放映されていない場合もある。この点が、大河ドラマなどの舞台巡りとは異なっている点の1つだ。

場所によっては巡礼者の来訪が歓迎されないこともあったが、なかには巡礼者と地域住民が連携してさまざまな取り組みに展開していくケースが見られるようになった。

グッズ開発販売の成功要因は丁寧な聞き取り

有名なのは冒頭でも紹介した埼玉県久喜市鷲宮である。2007年に放映されたアニメ『らき☆すた』の舞台になり、グッズ開発やイベント実施、地元の祭りへの「らき☆すた神輿」の登場など、さまざまな取り組みが行われ、話題になった。

「らき☆すた神輿」とは、地域の祭りである土師祭に、地域住民とファン、コンテンツホルダーが共同で制作した神輿を登場させた取り組みである。なかでも、「桐絵馬形携帯ストラップ」の開発と販売の仕方はファンへの丹念な聞き取りの末に実現した見事な取り組みであった。

「痛絵馬」を基に作った携帯ストラップ。販売戦略にも工夫があった(筆者撮影)

聖地になった鷲宮神社の絵馬掛け所には巡礼者の手によるアニメを描いた絵馬が掛けられていた。これを「痛絵馬」と呼ぶが、このストラップは、ファンによる痛絵馬をモデルにしたものなのだ。

また、アニメグッズの多くは複数のバージョンが販売され、ファンはそれをすべて集めたいという欲求がある。このことに注目し、「桐絵馬形携帯ストラップ」は、さまざまなキャラクターの絵柄のものが10数種類作られた。

おそらく、10種類を一度に販売しても、アニメファンは購入しただろう。しかし、鷲宮商工会はそのような販売方法はとらなかった。会員である個人商店で2種類ずつ販売したのである。そうすると何が起こったか。

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