イオン「食品スーパー改革」に踏み込む危機感 大規模化を捨て、「地域密着化」へ大胆に変化

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イオンの岡田元也社長は10月10日の決算説明会で、スーパーマーケット事業の再編についての説明に多くの時間を費やした(記者撮影)

長年、低収益にあえいでいたGMS事業は、今夏の猛暑効果による飲料商品の好調や総菜商品の底堅い需要に支えられている。

加えて、利益率のよいPBを拡販したことも功を奏し、採算が改善傾向にある。海外事業もイベント積極化などの施策が効き、中国を中心に採算が上向いている。

具体策が見えないデジタル化

とはいえ、今後の成長に向けては課題も少なくない。GMS事業については今後、食品部門を7つの地域事業会社に分社化し地域密着を強めるほか、衣料など4つの分野も分社化への準備を進める。分社化で商品開発力を強化する方針だが、このGMS事業の再編をスーパーマーケット事業の改革とどのようにつなげていくのか、難しい舵取りが想定される。

中期経営計画のもう1つの目玉であるデジタル化についても、現時点では道筋が不透明だ。今年5月には、米国のネット通販のボックスドに出資。同社のAIを活用したデータ分析や商品提案、物流効率化の技術をネット通販に生かす。さらに中国のテクノロジー企業とも合弁会社を設立。顔認証や掌の認証などの生体認証技術を活用し、施設管理や無人店舗の開発をもくろむ。

ベンチャー企業との提携は実現したが、さまざまな事業者が出店するECのマーケットプレイス開設やネットスーパー事業の強化策については、今回の説明会ではほとんど語られることはなかった。

中期経営計画の最終年度にあたる2020年度に売上高10兆円、営業利益3400億円を目指すが、その目標達成に向けては、当面苦悩が続きそうだ。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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