イオン「食品スーパー改革」に踏み込む危機感 大規模化を捨て、「地域密着化」へ大胆に変化

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だが今後の事業拡大について、イオンは危機感を募らせる。ここ数年は低価格志向に加え、嗜好の多様化、共働き世帯の増加による時短ニーズの高まりといった変化が起きている。加えて、コンビニエンスストアやドラッグストアなど異業種との競争も激化の一途をたどる。

こうした変化に対して、イオンは地域商品の発掘やエリア限定のPB(プライベートブランド)開発などを進めることで、地域の事情に応じたきめ細やかな運営を目指す。「スーパーマーケットの新しい運営を目指すためにも、5000億~6000億円の売上げ規模は必要。エリアごとに6~7つのかたまりとなって、地域に密着して、自主的にやっていく形に変えていく」(岡田社長)。

生産性向上や物流網の再構築を推進

地域密着化と同時に、プロセスセンター・物流センターのAI活用による生産性向上や物流網統合・再構築を進める。イオンの藤田元宏執行役は「環境変化に自由に、自在に対応するために、われわれのインフラ網は大規模化・汎用化の対極にシフトする。その結果、専門化・適正規模化へと変革し、バリューチェーンの骨格を成していく」と強調する。

今回のスーパーマーケット事業の改革は、2017年12月に公表した中期経営計画の主要取り組みの1つだ。上場会社と未上場会社の組み合わせなど難しいケースもあり、思うように統合が進まないことも想定されるが、基本的には中期経営計画に沿って着実な施策を打ち出したと言える。

スーパーマーケット事業の改革を掲げたイオンは、足元の業績が好調に推移している。今2019年2月期は売上高にあたる営業収益が8兆7000億円(前期比3.7%増)、営業利益が2400億円(同14.1%増)と、営業利益ベースで過去最高を更新する見通しだ。

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