台湾で「名古屋めし」が人気化した根本理由 名古屋と何が同じで何が違うのか

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「神楽家台北SOGO忠孝店」。台湾の百貨店内の飲食店は入れ替わりが激しいといわれるが、今年5周年を迎えた(筆者撮影)

名古屋市東区にある料亭「神楽家」は、5年前に名古屋の料亭として初めて台湾へ進出し、SOGO忠孝店に「神楽家台北SOGO忠孝店」を出店した。当初は台湾のパートナー企業との共同経営だったが、契約満了に伴い、今年3月から自社運営となった。

「自社運営はSOGOから熱心に勧められました。これはかなり異例のことですが、5年間の苦労が報われたと思いました。支配人や料理長、スタッフがお客様のご要望に対して真摯に向き合ったおかげです」と、店を運営する(株)リブレの社長、日下智重子さん。

「神楽家」を運営する(株)リブレの社長、日下智重子さん(筆者撮影)

台湾人に受け入れられなかったのは、名古屋では定番の八丁みそを使った赤だし。これが辛すぎるというのだ。そこで白みそを加えて辛さを和らげた。さらに、お造りの大きさも指摘された。名古屋の本店で提供する会席料理のお造りと同じサイズだったが、台湾人のニーズには合わなかったため、豪快に大きく切ったものを提供することにした。

いろんな味が楽しめる「松花堂」(筆者撮影)

私が選んだのは、お造りや煮物、揚げ物が一度に楽しめる「松花堂」(780元=約3000円)。魚介や肉などは台湾産が中心ですが、繊細で上品な味付けは料亭の味そのもの。特に、ご飯のおいしさは今回台北で食べたどの店よりも群を抜いていた。聞いてみると、台湾産のコメではなく、北海道産のななつぼしを使っているという。きっと、食材のみならず、調理法や接客においても、ブラッシュアップし続けているのだろう。そんな料亭ならではの、目には見えないきめ細やかな心配りも台湾人を虜にしているのだ。

台湾人は名古屋人とソックリ?

今回の旅で多くの方から台湾人の気質について聞いた。いわく、普段は質素な生活を送りながらも、週に1回くらいは海外でブームになっているグルメや新しくオープンした店に足を運ぶ。そして、味や雰囲気、サービスなについての感想を、店の人に遠慮なく言う──。そう、名古屋人とソックリなのだ。だからこそ、台湾に進出した名古屋の店は、台湾人のハートをガッチリつかんでいるのだと確信した。

屋台が立ち並ぶ士林夜市(筆者撮影)
永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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