台湾で「名古屋めし」が人気化した根本理由 名古屋と何が同じで何が違うのか
「日本のラーメンを台湾人は塩辛く感じるんです。だから、台湾進出した日本のラーメン店の多くは、日本人が食べておいしいと感じるギリギリまでスープを薄味にしています」と話すのは、今年9月、MRT(台湾の地下鉄)忠孝復興駅にプレオープンした「半熟堂 台湾台北店」のオーナーで、愛知県内の刈谷市、岡崎市、安城市でラーメン店を営んでいる杉浦正崇さんだ。
杉浦さんの実家は愛知県安城市の人気中華料理店「北京本店」。しょうゆと砂糖がベースのタレで味付けしたトロトロの玉子丼に豚肉の唐揚げをのせた「北京飯」が名物で、それを台湾出店の目玉とした。
「まず、台湾と中国の微妙な関係から『北京飯』という名称はNGでした。そこで店名を冠した『半熟飯』にしました。それよりも大変だったのは、味付けでした。台湾人のスタッフに食べてもらったところ、『辛すぎる!』と言われ、レシピを変えざるをえませんでした」(杉浦さん)
台湾人向けの半熟飯やラーメンを作りながら、杉浦さんは「本当にこれでいいのか?」と自問自答を繰り返した。そもそも台湾進出は、“安城のソウルフード”である北京飯を広めるためであるとの原点に立ち返り、今ではローカライズせずに出している。実際、「半熟飯」(160元=約610円)を食べてみたが、安城の「北京飯」そのものだった。
「名古屋の台湾ラーメンも当初は辛すぎて受け入れられなかったと聞いています。しかし、2回、3回と食べるうちにハマっていくのが台湾ラーメンに限らず、味が濃厚な名古屋めしの魅力でもあります。ゆくゆくは、台湾で名古屋の台湾ラーメンを定番化させたいと思っています」(杉浦さん)
「矢場とん」や「コメダ珈琲店」も出店
台湾人が日本のラーメンを塩辛く感じるなら、名古屋めしに欠かせない豆みそは、どのように感じるのだろうか。
名古屋めしの代表選手ともいうべきみそかつで有名な「矢場とん」は、一昨年2月、MRT東門駅前に台湾第1号店となる「矢場とん 台北東門店」を開店。さらに、同年9月には台北市内のデパート、新光三越A11にも出店した。
お昼時に東門店へ行くと、1階はほぼ満員で2階に案内された。ぱっと見たところ、8割は女性客が占めていた。注文したメニューをスマホで撮影している客もいた。
「台湾でとんかつは珍しくはありませんが、みそかつを初めて食べる方もいらっしゃると思います。オープン当初は私も調理や接客の指導で台湾の店へ行ってましたが、料理を残される方はいませんでした。ウチのみそかつは台湾でも十分に勝負できると思いましたね」と、矢場とん店舗営業部部長の千野広仁さん。
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