英国では「五輪ボランティア」が殺到した事情 大事なのは無償とか有償とかではない

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スポーツ・イングランドの「ボランティア」の定義は、「ほかの人の恩恵のために、無給で活動を行う人」である。ここでも「無給」がキーワードになっている。

ボランティアは自らの意思でこうした活動に参加し、活動を行っている間の食事代や交通費の支払いを受けるのが普通だ。スポーツ・イングランドによれば、スポーツ・ボランティアは「労働者」ではない。つまり、運営者側と雇用関係を持たない。もし雇用関係になれば、運営側は最低賃金を払うなどの義務が出てくる。

こうした日常的にボラティアを行う素地があるイギリスでは、2012年にロンドンでオリンピック・パラリンピックが開催された際のボランティアには、必要人員7万人をはるかに超える24万人が手を挙げた。

選手と一緒にボランティアもロンドンを行進

こうした中、3倍以上の応募者の中から選ばれたボランティアたちは、「ゲーム・メーカーズ」と名付けられた。「ゲームを作る人」という意味だが、これはオリンピックを「ゲーム」と呼ぶことに由来している。「みんなでオリンピック・パラリンピックを作るんだ」という意思が表れた名称だった。ゲーム・メーカーズは無給だったが、制服と交通費、当日の食事代は支給された。

約7万人の大会ボランティアに加えて、ロンドン市が募集したボランティア約8000人(「チームロンドンアンバサダー」)が観光案内の提供、大会会場までの交通案内を担当し、筆者もロンドン市内のあちこちでその様子を散見した。

大会終了後、選手団の祝勝パレードがロンドンの中心部で行われたが、このとき、選手団の後ろに大会ボランティアたちも行進。街行く人々から大きな声援を受けた。このパレードに参加したボランティアの西川千春氏は「選手がスポーツ・エリートとしてのイギリス代表だとすれば、ボランティアはまさに一般市民のイギリス代表だった」と書いている(『東京オリンピックのボランティアになりたい人が読む本』)。

ロンドン大会の組織委員会のウェブサイトによると、ロンドン市民で大会ボランティアとなったポール・ウィグノールさんは、「昔から、オリンピック・ファンだった」としている。2012年のロンドン大会のボランティアになるために申し込みをしたときには、60歳の手前だった。タクシー運転手として経験を積んでいたウィグノールさんは、スポーツのコーチとして働いていた経験もあって、審査に合格した。 

送迎を担当したボランティアの経験は「最高だった。わが都市ロンドンと英国のために」大きな成功となった大会の一部になれたからだ。

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