――とはいえ、公立が無償であることと比べると、大きな負担となることは間違いないと思います。これは海陽学園だけでなく、多くの私立が抱えている問題だと思いますが、「私立には経済的に余力のある家庭の生徒しか集まらない」という悩みがあります。その点は海陽学園でも同様なのではないでしょうか?
確かに、ご指摘はもっともです。うちでも多様性をなんとか確保したいと思っています。そのために、経済的に裕福な生徒しか海陽に来ることができない、ということがないように、「ほぼすべてタダ」という特別給費生制度を設けています。
高い学費が「すべてタダ」の制度で多様性を確保
――「すべてタダ」なんですか!
ええ、授業料も寮費もすべてタダです。1学年約120人のうち、対象となるのが20人と、1割の生徒がすべてタダです。かなりの割合でしょう?
――なるほど、ただ単に「金持ちの坊ちゃん」が集まる、というわけではないのですね。合格実績という点では、まずは1期生、2期生ともに優秀な成績を残しました。ではこれからの海陽学園について、お聞かせください。
まだまだ海陽の歴史は浅く、卒業生の活躍はこれからですし、そもそもOB自体が少ない。ですが、普通の学校と違っているのは、OBだけではなくて、1年ごとに変わる歴代のFMたちにも「海陽の色」がついています。今後、「海陽の色」がついた人材は、企業を中心に急速に根を張るはずです。使い古された言葉かもしれませんが、こうした「海陽での“絆”」が海陽のDNAだと思います。別の言い方をすれば「同調圧力」とでも言いましょうか。この言葉は、非常に悪い意味で使われますが、目標を設定して、そこに向けて団結して進んでいく力ということです。それが海陽生の絆の強さの表れだと思います。
青春の6年間を昼も夜も過ごした場所ですから、やっぱり生徒たちの愛校心はとても強い。海陽に入った子供で、よくあるのが、入学当初、長期の休みで帰省して、休み開けで学校が始まるときに「海陽に戻るわ」と言っていた生徒が、学年が上がるにつれ、「海陽に帰るわ」と言うようになるのだそうです。親としてはちょっぴりさみしい話かもしれませんが、ここで過ごす6年間で確実に大人の男になって、生徒たちは巣立っていきます。
逆に欠点は「女性の免疫がないこと」でしょうか。完全な男所帯ですから(笑)。イートンだってそうです。イートン卒業生にジェントルマンがいないかというと真逆で、紳士的そのものです。おそらく、自分の育った環境になかったものに対しては、尊敬の念が芽生えますから、逆に紳士的になるのだと思います。
(撮影:尾形 文繁)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら