ノーベル賞で脚光「がん免疫療法」の最新事情 開発中の新薬は多いが、落とし穴もある
本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大学特別教授が、2018年のノーベル医学生理学賞を受賞することに決まった。受賞の理由は、がん細胞にかかわる免疫チェックポイント分子の発見と、それによるがん治療法の確立である。
T細胞という免疫細胞の表面にある分子PD-1とがん細胞の表面にあるPD-L1が結合すると、免疫細胞が働かなくなる。そこでPD-1にPD-L1がくっつかないように、先にPD-1にくっついて邪魔する抗体を開発。すでに「オプジーボ」として小野薬品工業と米ブリストルマイヤーズ・スクイブ(BMS)が2014年7月に販売を開始し、がん治療に大きく貢献している。
免疫チェックポイント阻害剤の新薬ブーム
オプジーボだけではない。本庶特別教授と同時に受賞が決まったアメリカのジェームズ・アリソン博士も、CTLA-4という、別の免疫チェックポイント分子を発見している。制御性T細胞という、自己免疫の活動を抑制する細胞の働きを低下させるもの。オプジーボと前後してBMSと小野薬品が販売を開始した「ヤーボイ」(日本では2015年8月)は、アリソン博士の発見を基にしたチェックポイント阻害剤だ。
いずれも最初は悪性黒色腫という皮膚がんを対象にしたが、その後、非小細胞肺がんや腎細胞がん、血液がん、胃がんに適応を広げ、現在、承認申請中のものもある。そのほかオプジーボ6種、ヤーボイ7種で新たな適応での治験3相が進行中だ。米メルク(日本ではMSD)も2016年9月、PD-1阻害剤「キイトルーダ」を上市し、すでに4種のがんで承認を取得している。
一方、免疫細胞側のスイッチであるPD-1に結合して正常免疫の活動を妨げる、がん細胞側の分子PD-L1の働きを邪魔するPD-L1阻害剤として、ファイザーが2017年9月「バベンチオ」が皮膚がんで、ロシュグループの中外製薬が2018年1月に「テセントリク」、7月にはアストラゼネカが「イミフィンジ」でそれぞれ非小細胞肺がんの承認取得している。今、免疫チェックポイント阻害剤はブームといっていいほどだ。
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