ノーベル賞で脚光「がん免疫療法」の最新事情 開発中の新薬は多いが、落とし穴もある
チェックポイント阻害剤とは異なる考え方の治療法も現れた。
免疫細胞の中で異物を攻撃する働きを持つT細胞の働きを活性化するエフェクターT細胞療法はその1つだが、中でも期待を集めているのがCAR-T療法(キメラ抗原受容体T細胞療法)だ。
特定のがんを認識する機能と、認識した異物(がん細胞)を攻撃してやっつける機能を組み込んだT細胞で、アメリカではノバルティスの「キムリア」(国内は承認申請中)やギリアドの「Yescarta」(国内は第一三共製薬が治験2相準備中)がある。また、タカラバイオも独自に国内治験1/2相を実施中だ。
伝統的な免疫療法にも新しい波
こういった最新の分子生物学・抗体技術を使った医薬品の実用化が進む一方、古くからある免疫機構を利用したがん治療も進化を遂げつつある。
その1つががんワクチンだ。もともとワクチンは感染症の予防のために発展してきた。病原体の特徴を免疫細胞に教え込み、病気を予防するワクチンの仕組みを、がん治療に応用しようとするものだ。
樹状細胞ワクチンは、異物攻撃する免疫細胞に異物の存在と特徴を伝える役割を果たす樹状細胞にがんの特徴を教え込み、これを培養して量を増やし患者の体内に戻し、がん細胞への攻撃力を高める。一方のペプチドワクチンは、がん細胞の持つ特徴的なタンパク質をペプチド(タンパク質の断片)にしたものを人工的に作り、血管に投与して免疫を活性化させてがん細胞に対する攻撃力を高める。
また、免疫細胞療法にも新しい波が起こりつつある。この治療法自体は1980年代ごろにアメリカ国立衛生研究所のローゼンバーグ博士が開発した。患者から採血した血液から免疫細胞を取り出し、培養して本人の血管に戻す。初期には異物を殺す細胞だけでなく免疫機能を抑える細胞まで同時に培養してしまったためにあまり効果が出ないとされた。だが、免疫の仕組みの理解が進むにつれて、さまざまな技術が開発されつつある。
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