ノーベル賞で脚光「がん免疫療法」の最新事情 開発中の新薬は多いが、落とし穴もある
2010年にはアメリカのベンチャー企業・デンドレオン社が開発した前立腺がん治療の免疫細胞療法プロベンジが承認を得ている。さらに、こういった免疫治療を組み合わせて使おうとする動きもある。すでに国内で治験が始まっているものもある。
日本では現在、再生医療等安全確保法の下で行われる医療だが、法に従わず細胞加工や治療に関する届けも出さずに診療を行う怪しいクリニックが存在する。2017年に違法な細胞治療による逮捕者が出たことは記憶に新しい。違法とは言えないまでも、効果が証明されていないものも多く、免疫療法全般への不信感につながっている。
また、免疫細胞療法を含め細胞治療は医薬品として承認されるためのルールが長い間確立されず、医師の裁量で高額な自費診療のみが行われてきた。こういった経緯もあって、標準治療を行う医療者から目の敵にされている面もある。
医師主導で治験を開始
だが、日本でも再生医療等新法の施行以来、がん免疫療法についての開発のガイダンスが策定されるなど、道筋ができつつある。
先んじて治験を開始するものも現れた。和歌山県立医科大学では樹状細胞ワクチンの医師主導治験(膵がん)が行われている。また、東大と理化学研究所の共同研究で開発されたaAVC(エーベック)は、自然免疫(NKT細胞)と獲得免疫の司令塔である樹状細胞とを同時に活性化させる人工細胞で、現在、医師主導治験1相(急性骨髄性白血病)が進行中だ。他家細胞を使うため、自家免疫細胞療法と比べ治療に時間がかからないのも特徴だ。iPS細胞を使う治療法も研究されている。
先進医療として厚生労働省から認められたものもいくつかある。特に「先進医療B」は将来の保険適用を目指して臨床現場で評価することを目的としたものなので、おかしなものははじかれていると考えていいだろう。
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