ノーベル賞で脚光「がん免疫療法」の最新事情 開発中の新薬は多いが、落とし穴もある
ただ、先進医療はあくまで将来の保険適用にふさわしいかどうかを評価するための治療であることと、治験と異なり自費診療扱いとなる点には注意したい。
基礎研究ではネオアンチゲン(腫瘍特異的変異抗原)ワクチンなどさらに新しい研究も注目を集めているし、光免疫療法のようにすい星のように現れて国立がん研究センターで治験が始まっているものもある。
新しい治療や適応外の使用にはリスクも
新しい治療にはリスクが伴う。また、どんな治療にも限界がある。ノーベル賞を受けるほどの治療だからどんながんでも治るのでは、と誤解する向きもあるが、免疫チェックポイント阻害剤が実際に効く人は対象疾患患者の2~3割といわれる。間質性肺炎や横紋筋融解症など重い副作用が出る場合もある。
がんは原因となる遺伝子変異が人によって異なるため、同じ部位のがんであっても同じ治療法が効くとはかぎらない複雑な病気だ。すべての人、すべてのがんに劇的に効く薬はないのががん治療の難しいところだ。
承認が下りている治療薬でも、承認されていない領域のがんでは、医師の判断で投与しても効くとはかぎらないし、どういった副作用が出るかの情報もない。未承認なので保険適用外、費用は自己負担だ。治験や先進医療への参加を認められるには、全身状態やこれまでの治療の状況などさまざまな条件があり、誰でも参加できるわけではない。受けられる病院も限定される。
本庶特別教授自身も受賞決定時の会見で「感染症でいえばペニシリンの段階(治療法の開発は緒についたばかり)」、「今後は効果のある人とない人を見分けるマーカーの開発が必要」と発言している。
免疫療法は開発途上の治療法であり、過剰な期待を持たず、怪しい民間情報に惑わされず、まずは標準治療をしっかり受けることが重要だろう。最新情報は厚生労働省や国立がん研究センターが運営するがん情報センターなど、公的機関のサイトで確認するようにしたい。
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