「合理なきEU離脱」へ突き進むイギリスの末路 離脱のシナリオだけで経済は悪化している

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ほんの数週間前、メイ首相が閣僚をチェッカーズのカントリーハウスに招いて、一連の妥協策を見出した時点では、イギリスのEU離脱は比較的穏やかなものになるだろうと見られていた。

だが、その妥協策は彼女が率いる党の大半と、先月ザルツブルグでヨーロッパの指導者たちによって拒否されてしまった。その後、メイ首相と保守党はより困難な失策、つまりひょっとするとまったくの「合意なきEU離脱」に向かっていくしかないように思われる。

毎週5億ポンドの損失が出てるとの見立ても

すでに、イギリス経済は、国境や市場、物資の供給などをめぐる混乱が避けられないというシナリオだけで痛手を受けている。ある報告によれば、イギリスは経済活動において、毎週5億ポンドを失っている可能性がある。が、将来的な不透明性が増す中、損失額はさらに膨らむことが避けられないだろう。

来年中にもイギリスに、右翼的な、シンガポールのような安息の地を作ることを期待して、税金と支出を大幅に削減するEU懐疑派の保守政権が誕生するかもしれない。あるいは、解散総選挙が野党労働党をまったく正反対の舞台に招き入れ、公共部門へ投資する資金を得るために、富裕層と主要企業の税金を劇的に引き上げることになるかもしれない。

2回目の国民投票を求める声が高まりつつあるが、実現した場合、どのような結果を招くのかはまったく不透明である。

新たに投票を行えば、混沌とした「合意なきEU離脱」か、それよりはずっと穏健なもの――おそらくはノルウェーやスイスのような、EU連合の外ではあるが、その国々や制度とは密接につながっているような位置――の間の選択が得られるだろうと示唆する人たちがいる。あるいは、EU離脱を完全に放棄して、EUにとどまるという選択肢も投票にかけなければならないと主張する人たちもいる。

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