「合理なきEU離脱」へ突き進むイギリスの末路 離脱のシナリオだけで経済は悪化している
この3つの選択肢を、投票を何度も行わずに、どうしたら提示できるのかということに対する現実的な提案は、ほとんどなされていない。そして、このような予測のつかない時期には、合意を見出すことはますます困難に思えてしまう。
この問題が今やイギリスの国家としての名声ばかりでなく、実際の人々の生活にも被害を与えていることは、驚くべきことではないだろう。先月、筆者の介護人の1人が思いがけず辞めたとき、私はいつも利用している介護機関に電話をして代わりを求めた。しかし、代わりは1人もいないんです、と言われた。12年前にケガをして以来、介護を支えてきてくれた若い外国人労働者たちは、まったく来てくれなくなってしまった。
私は個人で代わりを見つけたが、このような流れは今やすでにビジネス、農業、サービス業、ヘルスケアなど経済の大部分に、さざなみのように広がっている。
ヨーロッパのほかの国よりましかもしれないが
サジド・ジャビド内相は10月2日、熟練労働者を優先するために新たな制限を設けるという、イギリスの最新のEU離脱後の移民政策に関する考え方の要点を説明した。経済の大部分が依存する、非熟練労働人口はどうなるのかについてはいまだ発表はない。ここでもまた、短期的な政治目標がより大きな政策を動かしてしまっているように見える。
このような状況がどの程度危険なのかは、どうやってその危険度を測るかによって決まるものだ。ある点で、現在イギリスで起こっていることは、その不透明度は強いものの、極右政党が成長を続け、多文化的で開かれた社会という基本原則を守るのに必死な主流派に取って代わりつつある、ヨーロッパのほかの国々の動向よりは警戒するべきものではない。
イギリスは2党支配制度の持つ回復力のおかげで、そのような事態から守られてきたが、アメリカと同様に、そのようなシステムの内部での政治的な争いが、まったく予想もつかないような結果をもたらしかねないのだ。
アメリカでは少なくとも次の選挙がいつになるかはわかる。だが、イギリスにはそのような明確性がないのだ。政権が崩壊すれば選挙は行われるだろう。昨年の総選挙で大敗したことを考えると(これは、メイ首相のもう1つの失策であった)、それがいつ起きてもおかしくないのだ。
短期的な問題が何であれ、EU離脱の物語によってイギリス政治が活性化し、国が本当に重要な問題に注意を向けるようになることが望ましいことは確かである。ただし、そこに到達するまでの道のりは酷いものになるのは間違いない。
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