「合理なきEU離脱」へ突き進むイギリスの末路 離脱のシナリオだけで経済は悪化している
イギリスが本当に有利な土壇場での欧州連合(EU)離脱に向けた合意を望んでいたのだったら、ジェレミー・ハント外相はEUをソビエト連邦に例えるべきではなかっただろう。
テリーザ・メイ首相率いる与党保守党が開いた秋季大会でのハント外相のコメントは、予想通りヨーロッパの指導者たちから怒りを買った。おそらくそれが彼の意図だったのだろう。ハント外相は同党の指導者の地位を求めて出馬すると目される数人のうちの1人だ。
欧米で台頭する「わざと混乱を招く政治家」
彼の前任者のボリス・ジョンソン氏ように、またボリス氏の前はドナルド・トランプ大統領のように、ハント外相は、たとえ政府がやらなければならないことや、今後の運営をますます難しくするとしても、大袈裟な言葉で注目を浴びることで、党内部の支持を得ようと計算していたように見える。
今、欧米諸国の政府を見渡すと、野心的な政治家が個人、あるいは党の利益を期待して、意図的に政策立案を混乱させているのを目にする。ドイツ、オーストリアそしてスウェーデンの極右勢力の台頭、イタリアの難民を取り巻く政治活動、そしてもちろんアメリカの議会にもこうした傾向が見られる。
こうした政治家たちは、恐怖、怒りそして何よりも分裂を武器にすることで、範囲は狭いながらも、危機や対立が強力な派閥や有権者の支持をもたらし、彼らに新たな力を与えるか、あるいは、彼らの権力を定着させてくれると確信しているのだろう。
だが、問題はこれをうまくやっている政治がほぼいないということだ。政治ニュースや地政学、そしてライバルたちの謀略などの一歩先をいくということが、期待通り運ぶことは滅多にない。
そして、イギリスのEU離脱に関する問題以上に、このことが当てはまるケースはほかにないだろう。このような政治手法が、おそらくイギリスをさらなる不安定な状態へと招き入れ、混沌とした「合意なき離脱」という結果へと導く可能性がある。