チョコと「みそ・昆布・梅干し」の不思議な関係 お酒とのマリアージュが前提のチョコとは?

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「私も始めたときは『大丈夫かな』と思いながら経営していました(笑)。でも、誰もしていないこと、まねできないことに逆にチャンスがある、と考えて挑戦してきました」(須藤氏)

専門学校を卒業後、洋菓子店やレストランへの勤務を経て、「ピエール・マルコリーニ」に就職。いつかは独立をしたいと、コツコツ資金を貯めていた。

「ただ、普通に店舗を開業するとなると少なくとも1000万円はかかるし、貯めるのに時間もかかる。今あるお金でできることを、とりあえず始めてしまおうと思い立ちました」(須藤氏)

ついに2016年の2月に独立開業。バー専用の着想は、知り合いのバーテンダーから個人的に頼まれて作った、お酒に合うチョコレートが思いのほか好評だったことだ。卸専用にすれば厨房さえあればよく、美しいパッケージも必要ないので、初期投資やランニングコストも抑えられる。

味わいに向き合える場所で食べてもらいたい

「それに、食べる環境も大切という思いがありました。生活感のある部屋で寝転がって食べるよりは、しっかりと味わいに向き合える場所で食べてもらいたい。自分でそれだけの場所を用意するにはお金がかかりますが、バーならば間違いなくいい空間ですから」(須藤氏)

現在の業績は、月商100万円。コストと自分の生活費を賄うのに、最低80万円と目標を決めていたが、十分以上の数字を出せるようになっている。うまくいった大きな理由の1つは、国内にあるバーの多さだ。

アトリエAirgeadの須藤銀雅氏。Airgeadにはゲール語で「銀」の意味があるそうだ(筆者撮影)

「バーは飲食店のなかでもダントツに多く、全国どこにでもあります。そして予想以上だったのが、バーテンダー同士の横のつながり。最初の10~20店舗ぐらいは直接自分で売り込みをしていましたが、あとは紹介やSNSで興味を持ってくださった方からの問い合わせなど新規の取り扱いが増えるようになりました」(須藤氏)

バー、キャバレー、ナイトクラブの事業所数はおよそ6万。ちなみにそば・うどん店が1万6000軒程度、「酒場・ビヤホール」や「その他の飲食料品小売業」が同程度で約6万3000軒だ(平成24年総務省経済センサス活動調査より)。お酒を飲む場所としてはマイナーなイメージがあるが、裾野は広いわけだ。

そのうち、須藤氏のチョコレートの取り扱い店舗は100軒ほどに上る。商品は前述のように特徴的な素材を使ったものを含め、定番が20種類。そのほか店舗限定や、ある特定のお酒に合わせて作る受注品なども入れると、約50種類になる。購入を検討するためのサンプルは卸値よりは安くしてあるものの、有料で提供。取引はその時ごとで、長期契約は行わない。

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