変わる葬送、「海洋散骨」が静かに広がる事情 実態に法整備が追いついていない側面も

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散骨とは、火葬後の焼骨を粉末状にして、そのまま海などにまく葬送方法だ。海洋散骨の業界団体である日本海洋散骨協会の初代代表理事で、現在は広報担当の代表副理事を務める村田ますみ氏は、「散骨については統計がないので正確にはわからないが、現在は年間1万件程度施行されているのではないか」と言う。

散骨が注目されている背景には、葬送についての価値観の多様化がある。自分の死後について「自然に帰りたい」など、これまで当然のごとく行われてきた「墓に入る」のとは違う選択肢を希望する人が増えたのだ。

「墓じまい」のために散骨を選ぶケースも

さらには、核家族化や少子化など家族構成の変化により、墓の継承が困難なケースが増加。後継ぎを必要としない墓に対するニーズが高まっている。合葬式の共同墓などもその1つだが、散骨であれば故人の墓はそもそも不要ということになる。

日本海洋散骨協会の村田ますみ代表副理事(撮影:尾形文繁)

「故人の遺志に加えて、最近では『墓じまい』のために散骨を選ぶ方も増えている」と村田氏は言う。墓じまいとは、墓を撤去し、墓石などを処分すること。これまでは、遠方にある実家の先祖代々の墓を片付け、現住所近くの墓地に改葬するといったケースが多かった。だが、墓の継承問題を理由に「墓じまいの後は、もう墓を作らない」ということで、散骨を検討する人も出てきている。

散骨への関心が高まるのに合わせて、新規参入業者も増加。まだ専業はごく少数で、葬儀社などの兼業が多い。遺族が立ち会わない委託散骨をメインに低価格路線を打ち出す業者も登場している。中には「何のセレモニーもなく、無造作に遺骨をバケツで海にまくなど、粗雑なことをする業者もある」(業界関係者)。

日本海洋散骨協会では、海洋散骨が原因で起こるトラブルを未然に防ぐために、「海洋散骨ガイドライン」を策定。粉骨(遺骨を遺骨とわからない程度に粉末化)、散骨場所の選定、自然環境への配慮、参列者の安全確保、散骨意思の確認、散骨証明書の交付などの義務を定めている。2017年からは「海洋散骨アドバイザー」という講習型の検定試験も開始した。

現在、協会加盟事業者数は正会員32社、特定事業会員8社。「業界の健全化に努めるとともに、行政などとの対話の窓口としての役割を積極的に果たしていきたい」と村田氏は言う。

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