変わる葬送、「海洋散骨」が静かに広がる事情 実態に法整備が追いついていない側面も

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
散骨の後に献花・献酒と続く(記者撮影)

散骨は法律で明確に規定されておらず、実態が先行しているのが現状だ。

刑法190条には遺骨遺棄罪があるが、1991年に「葬送の自由をすすめる会」が「自然葬」として散骨を実施し社会的注目を集めた際、「葬送のための祭祀で節度をもって行われる限り問題ない」との見解を法務省が示したとの報道がなされた。一方、墓地、埋葬等に関する法律(以下、墓地埋葬法)は、公衆衛生上の観点から埋葬と焼骨の埋蔵について規制しているのみで、散骨については想定外だ。

熱海市や伊東市には独自のガイドライン

陸上散骨については、関連自治体の協力を得て島全体が散骨場となっている島根県隠岐諸島のカズラ島のようなところもあるが、周辺住民とのトラブルや反対運動が起こったことなどから、条例で規制している自治体も出ている。

海洋散骨については、海は国の管轄ではあるが、熱海市や伊東市のようにガイドラインや指針を設けている自治体もある。熱海市では市内の土地から10キロメートル以上、伊東市では6海里(約11キロメートル)より離れた場所で散骨することとしている。法律の規定がないため、散骨に関する取り扱いは、自治体によってさまざまだ。

墓や葬送の歴史が専門の森謙二・茨城キリスト教大学名誉教授は「祖先崇拝や家による遺体・遺骨の保存・継承という社会の枠組みが崩れ、刑法と墓地埋葬法の間に『法の空白』というべき領域が出現している。あらためて『死者の尊厳を守る』という観点から、墓地埋葬法の改正も含め、新しい秩序を再構築する時期に来ている」と言う。

価値観の多様化、家族構成の変化は、葬送のあり方をも大きく変えようとしている。

三上 直行 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みかみ なおゆき / Naoyuki Mikami

1989年東洋経済新報社入社。これまで電機などを担当。現在は、冠婚葬祭業界を担当。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事