ホームドア普及へ奥の手、運賃値上げ案浮上 鉄道会社と利用者のどちらが費用を負担?
2016年8月に地下鉄銀座線の青山一丁目駅で起きた視覚障害者の転落死亡事故を契機に、社会的な関心が高まった「ホームの安全」。列車との接触や転落事故を防ぐうえで特に効果が高いのがホームドアだ。
首都圏の鉄道では整備のピッチが加速し、鉄道会社によっては当初の計画を前倒しして取り組んでいる例もある。東急電鉄は東横線・田園都市線・大井町線の全64駅への設置完了時期を1年早めて2019年度中に変更。東京メトロは2025年度までに全線全駅に設置する方針だ。JR東日本も各線で整備を進めている。
だが、ホームドアの設置には1駅あたり数億円から十数億円とも言われるコストがかかる。鉄道会社の負担だけでなく国や地方自治体による補助にも限界がある中、駅のバリアフリー設備に関する整備費用を運賃に上乗せする「利用者負担」の制度検討も進む。
青山一丁目駅の悲劇から約2年、ホームドア整備を取り巻く現状はどうなっているのだろうか。
経験値アップ「作業は早くなった」
整備を前倒しして進めている鉄道の一つ、東急電鉄のホームドア設置工事の現場を見た。
8月下旬の深夜、0時45分過ぎの田園都市線たまプラーザ駅。上り最終電車が発車したあと、発車案内には通常存在しない「当駅止まり」の表示が灯っていた。これから行われる上りホームでのホームドア設置作業に向け、ドア本体を車内に積んだ回送電車がやってくるのだ。
下り線の運転がまだ続く中、ホームドアを載せた電車が駅に到着。全線の運転が終了するのを待ち、1時半過ぎからいよいよ設置工事が始まった。約80人の作業員が電車内からホームドア本体を運び出し、設置場所へと並べていく。
同社は2000年の目黒線を皮切りにホームドアを整備し、2012年以降、東横線・田園都市線・大井町線でも設置を開始した。作業のノウハウが蓄積されたことで「当初は100人以上で作業していたが、今はこの人数でできる。設置時間もだいぶ早くなった」と、工事を担当する同社多摩川工事事務所の村上浩至課長補佐はいう。
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