ホームドア普及へ奥の手、運賃値上げ案浮上 鉄道会社と利用者のどちらが費用を負担?

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1台あたり重さ400kg以上というホームドアだが、電車からの搬出作業は約15分でスムーズに完了。次いで、車両の外側に養生用の段ボールを巻いたうえで取り付けが行われる。ホームドア1台につき数人の作業員が、あらかじめ設置してあるホーム上の台座へと手際よく固定作業を進め、工事開始から約2時間後の3時半過ぎには、10両分の取り付けがほぼ終了した。

村上課長補佐は「以前は4時台まで作業が続いていたが、今はこれでもちょっと遅いほう」だという。

取り付け作業中のホームドア。取り付け作業は一晩で終わる(記者撮影)

だが、取り付け作業自体の時間は短縮されたものの、機器の調整を行う技術者や工事監督者の振り分けなどの都合もあり、実は1駅あたりの設置に要する期間が短くなったわけではないという。設置計画の前倒しは、単に作業がスピーディになったためではなく、取り付け前に行うホームの補強工事を複数の駅で同時に並行して進めるなど、さまざまな効率化の積み重ねで可能になったと村上課長補佐は話す。

取り付け自体は一晩で完了するホームドアの設置だが、実際の工事は重いドア本体をホームに載せるための補強だけでも早くて半年、長ければ2年程度かかるといい、たまプラーザ駅も補強工事を始めたのは昨年だ。2019年度に設置予定の駅についても「まだ何もやっていないように見えるかもしれないが、実際にはすでに着手しており設計もほぼ済んでいる」(村上課長補佐)。設置から運用開始まで長い時間がかかるだけに、計画の前倒しも容易ではない。

必ず補助があるわけではない

今年3月末時点でのホームドア設置駅数は全国725駅。東急のように設置計画を前倒しする鉄道事業者もあるものの、整備状況は地域や路線によってばらつきがあり「普及した」というにはまだ遠い。

普及へのネックの一つは1駅で数億円以上といわれる高額な整備費用だ。国や地方自治体による補助制度はあるが、ホームドアを設置するすべての駅に対して補助金が交付されているわけではない。東急の場合、国や自治体の補助を受けて整備しているのは全64駅のうち、申請中も含めて26駅。また、ホームの補強工事については「国からは補助があるが、基本的に自治体からはない」(村上課長補佐)という。

国土交通省によると、ホームドア整備に対する国の補助制度は、JRや私鉄が対象の「地域公共交通確保維持改善事業」「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業」、地下鉄が対象の「都市鉄道整備事業」と、JRや私鉄が駅改良工事を行う際にあわせて整備する場合を対象とした「鉄道駅総合改善事業」の4つがある。補助率は「都市鉄道整備事業」が35%、そのほかは整備費用の3分の1だ。これに、地方自治体による補助も3分の1程度加わる。

だが、財政状況の厳しい地方自治体では補助金に上限を定め、鉄道側の負担が3割を超える事例も少なくないという。

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