認知症を受け入れ生きる人が見つける居場所 何もかもおしまいではなく他者も支えられる

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現在、悠翔会のクリニックは東京都を中心に11カ所。常時4000人の患者を診療している。緊急事態に備え365日24時間対応の体制も構築、法人外のクリニックとの連携も進めている。認知症の人を含め高齢者のケアには、地域全体の介護力の向上が必要不可欠だ。

周囲から何らかのサポートを受けるばかりではない(写真:【IWJ】Image Works Japan / PIXTA)

悠翔会は医療、介護など他職種の人たちを集めた「ケアカフェ」を定期的に各クリニックで開催。ケースカンファレンスやグループディスカッションなどを通じて緊密な関係づくりを行っている。

2014年に東京都三鷹市で認知症の専門クリニックを開業したのが、のぞみメモリークリニックの木之下徹院長だ。木之下氏は2001年に東京都品川区でクリニックを開院。主に認知症に関する在宅医療を長年にわたって行ってきた。

「これは将来の自分だ」

「自分の中で大きな転機となったのは、認知症の人を診ているうちに『これは将来の自分だ』と痛切に思うようになったこと。介護する家族が大変なのは理解しているが、あらためて認知症をその人自身の問題としてとらえ、本人のためになる医療を提供したいと考えた」

木之下氏は認知症の人と直接出会い、認知症になった後の人生を本人とともに考えていく場として、専門外来クリニックに思い至った。「自分が認知症になったらどうしよう」と思い悩む人の受け皿を医療側がきちんと用意していないとの現状認識もあった。のぞみメモリークリニックでは予診、問診、血圧などのバイタルチェック、神経心理検査、MRI検査など多角的な検査によって認知症かどうかを診断する。家族が連れてくるケースがまだまだ多いが、認知症の人が自ら訪れる割合は着実に増えているという。

ヒノキの無垢のフローリング上では、近所の子どもたち10人以上が宿題をしたり、ゲームに熱中したりと、それぞれ自由に時間を過ごしている。千葉県浦安市にある、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の「銀木犀」で、毎日のように繰り広げられている光景だ。子どもたちの目当ては、1階フロアで開店している駄菓子屋で、1カ月で50万円近く売り上げたこともあるという。店番を務めているのは、認知症の入居者たちだ。

子どもたちだけではない。1階フロアは地域の人が自由に利用でき、お昼時には入居者用の健康的なランチメニューを提供している。母親向けのダンススクールを開いたり、近所の大学生が寺子屋式に子どもたちに勉強を教えたりもする。「同じ場所にいると自然と入居者も地域の住民として溶け込んでいく」。銀木犀を運営するシルバーウッド代表の下河原忠道氏は狙いを話す。

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