日本がついに「北朝鮮」への投資を決めた事情 GTI加盟は日朝首脳会談へのチケットなのか
投資額は案件によっては数十億ドルにのぼるとみられている。ロシアの専門家が行った控えめな推計によれば、鉄道で25億~35億ドル、ガスパイプラインで60億ドルが必要になるという。しかし、実際にはこの2倍は必要になるのではないか、といった見方が大勢だ。日本からの投資は、韓国とロシアを喜ばせるだろう。
ただし、北朝鮮に対する国連制裁が劇的に緩和されないかぎり、このような地域経済圏構想が具体化することはない。
また、戦力不保持を定めた日本国憲法第9条の改正に意欲を燃やす安倍氏は、なお「北朝鮮の脅威」という名の援軍を必要としている。
「金で首脳会談を買った」は最悪
安倍氏は南北関係が再び悪化し、融和ムードが崩れるのを待ち望んでいるに違いない。ただ、同氏は国連制裁が緩和された場合のバックアッププランについても検討を進めてきたはずだ。GTIへの加盟や、投資の可能性に言及することは、国際制裁違反とはならない。安倍氏は単に交渉のカードとして相手の鼻先にニンジンをぶら下げるだけで、一線を越えるわけではないのだ。
日本からのオファーに北朝鮮が関心を持つかどうかは、提示金額にもよる。ただ、この種の長期プロジェクトは途中でいかようにも内容が変わりうるため、北朝鮮が提案に応じる可能性は低い。日本政府は10年先の夢を語りながら、空手形を切り続けることもできる。しかし、こうした落とし穴があることは北朝鮮政府にもよくわかっている。
さらに、政治的な駆け引きに振り回される可能性があるという意味では、北朝鮮も同じだ。関係がこじれた場合にインフラ計画を手玉にとって圧力をかけてきそうな相手の提案に、北朝鮮が乗ることはないだろう。
もちろん、一括で資金が振り込まれるのであれば、北朝鮮は喜んで受け入れるに違いない。しかし、このようなカードは安倍氏にとってあまりにリスキーだ。敵国・北朝鮮から「首脳会談を買った」と国民の目に映ってしまったら、それこそたいへんな汚点になってしまう。
(文:アレッサンドロ・フォード)
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