鈴鹿F1日本GPを彩る伝説マシン走行の舞台裏

30回記念大会では往年のドライバーが操る

筆者自身はホンダ・コレクションホールのテストライダー&ドライバーを20年以上担当しているが、この100Tに関して言うと気候などの影響も含めて、走行毎にコンディションの変化が多いマシンの1台と言える。

今回の事前テストでは、週末の走行に合わせて英国サラブレッドF1で使用されているエイボン社製のスリックタイヤのスカッフィング(新品タイヤを少し走らせて皮むきすること)と、新調した4本のホイールの適合性がニューパーツの確認となり、ほかにはエンジン、ミッション、ブレーキ、サスペンション、ステアリング、エアロダイナミクスに加え、それらの作動感などを確認する。

Lotus 100Tと操る筆者。今回のデモンストレーションランは”Legend F1 30th Anniversary Lap”と名付けられている(写真:Honda)

特にエンジンに関してはインジェクター(燃料噴射装置)制御とファイアリング制御(点火タイミングやターボラグを解消するシステム)のECU(エンジンコントロールユニット)も30年の時を隔てて経年劣化での影響が出ることも多く、気候変化からくる症状かどうかの判断も限られた走行時間で見極める必要がある。

十分に暖気をしたマシンはクラッチ作動からシフトフィーリングも非常にスムーズだが、シフトリンケージ自体の遊びの多さには、シフト操作への慎重なアプローチが要求される。エンジンは高回転領域に重点を置かれて燃料調整がセットされているので、低速回転(5000~6000rpm)の走行はエンジンを不調にさせる。

水温は十分に上昇しているので、新品スリックタイヤのグリップを確認しながらすぐにペースアップ、エンジン回転を10000rpmまで上昇させながらエンジンを確認。安全マージンを確保するためにスロットル開度を慎重にエンジン回転とシンクロさせていく。

ロータス 100Tは中嶋悟氏によるデモランが行われる

結果、6気筒の爆発バランスが悪いことに気がついた。

この状態での走行はエンジン内部に過大な負荷を掛け、最悪はエンジンブローを起こすことも考えられる。走行継続は無理があると判断し、ピットへ戻り担当エンジニアへその症状を詳細に伝える。ピット内において、エンジンを始動し各気筒の排気温度から燃焼症状を確認したところやはり気筒に違いがあり、担当エンジニアの手で調整を行うこととなった。

少々の時間を要しながらも今回は現場レベルでの調整で再走行。結果的には、鈴鹿でのデモンストレーション走行に対応できるレベルにエンジンが復帰した。多少大きめのハンドルのすき間から見えるアナログの回転計に目をやり、スロットル開度100%で本日の最高回転11200rpmを確認し、各ギアのシフト操作アップ&ダウンと合わせてシフトダウン時のエンジンレスポンスも確認。

ほか、ブレーキ性能およびバランス、ステアリングレスポンスも確認したうえで終了。1.5Lターボ最終年1988年型ロータス・ホンダ100Tは、当時のドライバーの中嶋悟氏の手によってデモンストレーションランが行われる。

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