バイオベンチャー「そーせい」が迎えた大試練 実験サルにがんが発生、治験中断の誤算

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「ほかの薬の開発やプロジェクトへの影響はどうか」。説明会では、今回の事件がほかの開発薬に広がるのではないかという懸念を持つ投資家からの質問が相次いだ。「いつになったらよいニュースが聞けるのか」など、会社へのいらだちを素直に表す意見も飛び出した。

「1つの薬だけでなく、当社にはたくさんのプロジェクト、多くの有望なポートフォリオがある」。ピーター・ベインズ社長CEOは懸命に投資家の懸念払拭に努める。

治験再開には最低6カ月かかる

確かに同社は日本のバイオベンチャーには珍しく豊富な開発候補品を持つ。今回の説明会資料によれば、治験段階の候補品が6つ、その一歩手前の前臨床の薬が6つ、さらにその手前の探索段階の薬が5つという具合。昨年末に海外で約210億円を調達しており、開発資金も当分は十分にある。

ただ、前述のとおり、今回の開発薬がアラガンとの大型提携の中で最先行していただけに、その治験中断の影響は小さくない。ベインズCEOは「6~12カ月以内に治験を再開したい」と語ったが、今後、原因究明を本格化する段階であり、現時点では治験再開のメドは立っていない。最悪の場合、「治験が再開できない可能性もある」(ベインズCEO)。

2015年2月、英ヘプタレス買収で記者会見した田村真一会長。当時は約480億円という買収額の大きさが話題になった(撮影:風間仁一郎)

今回の治験中断が、関連する資産やのれんの減損に自動的につながるわけではないが、治験中止となれば、そーせいの財務に大きな影響を及ぼす可能性もある。

発表を受けて株価は大きく調整した。現在では1200円前後と、ピーク時の2割程度にすぎない。かつてバイオベンチャーの中で断トツだった時価総額は、ペプチドリームやサンバイオに大きく水を空けられており、投資家の目も厳しくなりつつある。

「こういうことはこの業界では日常茶飯事。会社が強靭になるためのよいチャンス」。説明会の最後に創業者の田村真一会長はそう語った。その言葉どおり、雨降って地固まるとなるのか。悲願である世界的バイオ会社に脱皮できるか、大きな正念場にそーせいは差し掛かっている。

大西 富士男 東洋経済 記者

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おおにし ふじお / Fujio Onishi

医薬品業界を担当。自動車メーカーを経て、1990年東洋経済新報社入社。『会社四季報』『週刊東洋経済』編集部、ゼネコン、自動車、保険、繊維、商社、石油エネルギーなどの業界担当を歴任。

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