出版不況に爆伸び、レタスクラブの「神会議」 沈鬱編集部を一変させた「素人リーダー」の妙

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松田の編集長就任に当たり、会社からは、女性向けコンテンツという意味では近しい分野だから編集機能もくっつけるのがいい、コミックエッセイをレタス(クラブ)にも入れたい、と、ごく簡単な説明があったという。「ずっと編集に携わってきた部員はかなりびっくりしたと思う」。松田は当時をそう振り返る。

1日も編集部を経験しない中でスタートを切った、松田の編集長としての日々。着任時点で向こう3号分程度の企画内容が固まっていたため、その貯金を消化する作業の中で業務の流れや編集部の雰囲気をつかんでいった。

沈黙の続く会議では、生きのいい企画が作れない!(撮影:梅谷秀司)

まず松田が問題意識を強めたのは、企画会議のあり方だった。「1時間、発言する人はごく一部で、あとは沈黙の続く会議。これでは生きのいい企画が作れないと思ったので、とにかく変えようと」。それまでは各メンバーが作り込んできた企画書をベースに、内容を読み上げる形で会議を進行していたが、松田は企画書の持ち込み自体を禁止した。

レタスクラブの場合、企画出しは発売の3~4カ月前に始まる。6月発売号に向けた最初のアイデア出しが2月に行われる、といった具合だ。そこで企画会議ではまず、雑誌が店頭に並ぶ頃の「読者の心境」を可視化するところから始めるようにした。「6月号だったら、下駄箱がにおうとか、洗濯物が乾かないとか。ひととおりホワイトボードに書き出してから、さあどんな企画がいいでしょう?ということで、端から言ってもらう形式にした。連想ゲームのようなイメージ」。

企画会議のこだわり

とんちんかんな発言が出ても、否定はしない。「いいねいいね」と松田自身が盛り上げた。その結果、皆が楽しんで発言する雰囲気がだんだんとできてきた。ところが、同時に困った事態も発生する。「会議の時間内に考えればいいとなると、皆手ぶらで来るので、自分自身の体力の消耗が激しい。多少は宿題があったほうがよさそうだとわかった」。

最終的には、企画書を作らない方針はそのままに、料理、美容、整理整頓など定番テーマについて、各自が扱いたい内容を150字程度の短い文章を作ってくる「ツイッタースタイル」に落ち着いた。

もう1つ松田がこだわったのが、すべての部員がすべてのテーマについて150字を用意してくるようにした点だ。自分は料理担当で美容担当ではない、という部員にも、美容のアイデアを求める。「得意分野に関する企画提案は、レベルが上がりすぎる傾向にある。たとえば、美容担当の人は美容の知識量がすごくて、ともすると、私たち凡人がずっと低レベルにいることを忘れてしまう。だから、素人目線の意見をフックに、お互いにレベルを“引きずり下ろす”作業は重要」。

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