「ことりっぷ」が切り開く旅行誌の新たな活路 独自の世界観に引かれたコミュニティが武器

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“2泊3日の小さな旅”がテーマのエリアガイドブック「ことりっぷ」は創刊9年で、累計発行部数が1500万部に達した。2014年からはマガジンも発行している(撮影:尾形文繁)

出版不況と言われて久しい昨今、多くの出版社が「売れる本」「読まれるメディア」作りに尽力している。こうした中、昭文社が発行するエリアガイドブック『ことりっぷ』が、旅行誌として新たな領域に挑んでいる。

創刊9年の『ことりっぷ』のこれまでの刊行数は110以上、累計発行部数は今年2月に1500万部に達した。“女子旅”の代名詞ともなった『ことりっぷ』には、そのブランド力を期待する自治体や企業からのタイアップオファーも相次いでいる。昭文社の足元の業績は苦戦気味だが、ことりっぷの販売部数は底堅いうえ、タイアップなどを含めた「ことりっぷ事業」は順調に伸びているという。

ウェブやアプリが新たな「入り口」に

道路地図や旅行ガイドブック『まっぷる』シリーズを発行してきた昭文社が『ことりっぷ』を創刊したのは2008年。それまで旅行ガイドブックと言えば“家族向け”“蛍光色を使った派手な表紙”“網羅的に情報を掲載”が半ば常識となっていたが、『ことりっぷ』では若い女性にターゲットを絞って情報を厳選、持ち運びしやすいよう小型化・軽量化し、シンプルでかわいいデザインを採用した。

これが功を奏し、旅好きな女性たちの間で『ことりっぷ』はカリスマ的な人気を持つように。グループで旅行に行く女子旅ブームの火付け役にもなった。

しかし、ここ数年で読者が好む旅の傾向が変わってきているという。

「昔からことりっぷの読者には『ガイドブックに載っていないところに行きたい』という好奇心旺盛な人が多い傾向がありましたが、最近はそれが顕著になっています。また、おひとりさま旅のニーズも高まっていますね。写真を撮ってSNSにアップし、1人でもみんなとつながっている感覚を持ちながら旅を楽しんでいる印象です」と、デジタルメディア事業部デジタルメディアグループの鈴木愛美氏は話す。

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