「ことりっぷ」が切り開く旅行誌の新たな活路

独自の世界観に引かれたコミュニティが武器

自治体だけでなく、女子大やファッションブランドとタイアップした小冊子もある(撮影:尾形文繁)

ガイドブックではなく、20ページ弱のフリーペーパーとして配布する形も取っている。製作数は年間30冊前後。地方自治体だけでなく、女子大やファッションブランドとタイアップするケースも。反響が高く増刷がかかることも多いそうだ。

異業種と連携したグッズ製作も興味深い。コラボという形を取ることもあれば、監修、ライセンスという形を取ることも。これまで誕生したグッズは30以上。アフタヌーンティーとはキャリーバッグやシューズケース、折り畳み傘といったトラベルグッズを製作したほか、エースコックとはスープを作った。

異業種とのタイアップ製品も続々と増えている(撮影:尾形文繁)

「カップスープは『えっなんでことりっぷが!?』と驚かれましたが、ことりっぷを知らない方に手に取ってもらう良い機会になりました。本屋以外の場所でことりっぷの名前を見かけることなんてなかなかありませんから。SNSに『パッケージがかわいい!』と投稿してくれる方も多く、期待以上のコラボ効果が出たと思います」(菊本氏)

4年前に「ことりっぷ事業部」を設立

タイアップやコラボから得られる収益が増えたため、2013年には「ことりっぷ事業部」が編成された。デジタルメディアグループインバウンドメディア担当の鶴岡優子氏は、「ことりっぷは、広告収入や購読料以外の稼ぎ方があることを教えてくれた存在です。ビジネスの幅が大きく広がりました」と話す。

翻って旅メディア全体を俯瞰(ふかん)してみると、取材経費の削減により編集部が十分にリサーチできず、過去の出版物の焼き直しをしている雑誌が目につく。ウェブでは「とにかくPVを稼ぐこと」を優先に、取材自体することなくクチコミをまとめて紹介するキュレーションサイトが増えていて、投稿者に許可なく写真や文章を転載して問題となっている。メディアの苦境がそのまま情報の質の低下を招いていると言える。

業界全体に逆風が吹き“編集”がおろそかにされる中で、『ことりっぷ』では「編集部が現地に赴き、足で情報を稼ぐ」というスタイルを変えず、一冊あたり半年から1年かけてじっくりと製作している。

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