完成間近「品川新駅」に秘めたJR東日本の野望 建築家・隈研吾氏が考える「理想の駅名」は?

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汐留貨物駅跡地を再開発した汐留シオサイトには、電通、日本テレビ、日本通運など日本を代表する大手企業が本社を構える。超高層ビルが林立する光景は壮観だが、オフィス機能に特化しすぎて、オフビジネスのにぎわいには欠ける。同じく再開発で生まれた品川インターシティや品川グランドコモンズも同様だ。

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一方で、六本木ヒルズは、ランドマーク的存在の「森タワー」を中心に映画館や美術館が取り囲み、オフィスワーカーだけでなく家族連れやカップルも楽しめる街となっている。丸の内のオフィス街が1階に商業施設を入居させ、休日のにぎわいを取り戻した。この点はJR東日本も十分意識しており、「にぎわいのある広場や文化・商業施設も造る」(同社)としている。

箱型ビルの林立では物足りない

もう1つ、気掛かりな点がある。再開発のイメージ図にはシンプルな形状のビルが並んでいるだけで、具体的な建物のデザインはまだ発表されていない。何の変哲もない箱型のビルの連続では、いささか物足りない。外灘から眺めた浦東新区のユニークな高層ビル群が上海の観光名所となっているように、品川の再開発エリアも、東京のシンボルになってほしい。

品川新駅周辺の再開発イメージ図(JR東日本HPより引用)

3つの超高層ビルの屋上を巨大な「船」でつないだシンガポールの総合リゾートホテル「マリーナベイ・サンズ」とまではいかなくても、白い網状のデザインが個性的な新宿西口の「モード学園コクーンタワー」のような建物が1つ加わるだけで、街並みは大きく変わるに違いない。

隣接地には都や住友不動産も超高層ビルの建設を決めている。さらに、将来の再開発が検討される品川駅西口まで含めると、全体の再開発スケールはとてつもなく大きくなる。はたして、世界中の人々が「訪れたい」と思えるような恒久的な都市デザインを描けるか。本業の鉄道では分単位の正確な運行で世界を驚嘆させるJR東日本が、不動産事業でも世界レベルを目指す。同社にとって第2の挑戦である。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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