麻原彰晃を漫画で描くフランス人作家の信念 カルト宗教が毒ガステロを企てたあのとき
「この作品は事実に着想を得た創作であり、人物、場所、事件等は架空のものです」
と冒頭に説明がある。しかし、「ドキュメンタリーと受け止められることも全然問題ない」と原作者のLF・ボレ氏は語っている。
たしかに架空だろうという設定箇所は直感でわかる。が、おおむね事実を基にしているため、どこか見慣れた描写も多い。
この物語で描かれた教団信者たちの衣服やヘッドギアは、オウム真理教しか想起させないし、サリン製造拠点である「第7メーダー」は「第7サティアン」のことか。
教団関連の登場人物の容姿は、オウム真理教の彼らにそっくりだ。教団教主(尊師)は麻原彰晃以外の何者でもなく、教団科学部門最高執行責任者は村井秀夫、日比谷線でのサリン散布実行者は林泰男に似ている気がする。
ゆえに潜在意識の中にあるオウム真理教一連の映像と、このコミックがシンクロ。生々しくリアルに感じるし、異国の作家が描いていることもあってか、不気味さが際立ち心がざわつく。
フランス人ジャーナリストの視点
当初、この作品は、東京での「地下鉄サリン事件」を物語の中心とするつもりだったという原作者のLF・ボノ氏。だが、調べを進めるうちに、東京以前に松本という小都市で同じようにサリンがまかれ、多くの人々が苦しんだことを知り、「これが端緒となった事件なんだ」とわかる構成にしたのだという。
自らも妻も被害にあった第一通報者が容疑者扱いされるという、信じ難いことが起きていた松本サリン事件の事実に驚愕、作品はここにフォーカスしている。
私も読んでいて被害者の河野義行さんを思い出し、胸の痛みと怒りがこみ上げた。