首都圏「私鉄通勤ライナー」群雄割拠の時代に

運賃、座席、乗り比べてわかった各社の戦略

このタイプの車両に接してもう一点気になったのは、ロングシートの配置にした際に普通の車両よりも前にせり出しており、通路空間が狭くなってしまうことだ。残念ながら朝ピークのラッシュに不向きであり、京王でも上位列車から外して運用している。どの道、その配慮が伴うならば使途を分けた車両でよかったのでは?と思うのだ。

だが、「京王ライナー」は快適だ。明大前の運転停車は前方の踏切作動の関係らしくオヤ?と思うが、それ以外は要所の調布も通過して突っ走る。新宿から京王多摩センターまで30分、深夜の2本は25分で走破する。押し込まれて耐え忍ぶ特急の新宿~調布間の混雑とは雲泥の差で、しかも朝ピークの渋滞する上り急行が52分かかる区間を、半分である。わりに強気と感じる価格設定がわかる気がする。

特急や準特急が頻発している八王子方面の系統よりも、直通の特急と急行への乗り換えが混在する相模原線橋本方面への系統のほうが、見た感覚で乗車率が高い。

東急線直通で生まれたS-train

西武鉄道は特急レッドアローの通勤ユースが早くから定着していたが、そこに4ドア通勤車のライナーを導入し、並立させた。アイデアのきっかけは東京メトロ副都心線と東急東横線の直通化で、2013年3月、これにより西武池袋線と横浜が一本に結ばれた。まずは休日、ネームバリューを誇る横浜への流れが生まれ、西武は負けじと秩父の強化に力を注ぐ。

2017年3月25日、鳴り物入りで登場した「S-TRAIN」の出発式(撮影:今 祥雄)

そこで横浜方面への送客、西武線沿線への誘客として「必ず座れる列車」が考えられ、東京メトロや東急の路線の性格や設備からは4ドア車が必要とされた。これを行楽輸送だけに供するのは適当ではなく、あわせて平日は東京メトロ有楽町線方面の都心と西武線間の着席通勤列車に充当する。2017年3月、西武鉄道は新造の40000系を投入して「S-Train」を運行開始した。

平日の「S-Train」は、再開発で高層都市となった湾岸の豊洲と所沢の間を結ぶ。豊洲発下りは18時から22時まで、毎時ジャスト発の計5本だが、その送り込みで所沢発の上りも営業している点、そして早朝にも1本ある点が特筆される。

「ゆりかもめ」が到着するたび一団となって帰宅客が降りてくる有楽町線豊洲駅ホームの券売機で券を購入すると、「東京地下鉄」の社名と「列車指定券」の文字がある。西武のチケットレスサービスもあり、「Smooz」と名付けられている。料金は510円で、内訳は記していないが、東京メトロ分と西武鉄道分の合算である。ちなみにレッドアローの池袋~所沢間「特急券」は400円、S-Trainの後に新設された新宿線系統の自社線内列車「拝島ライナー」(列車指定券)は300円だから、2社に跨る分、割高になる。

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