首都圏「私鉄通勤ライナー」群雄割拠の時代に 運賃、座席、乗り比べてわかった各社の戦略

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次は「京王ライナー」。平日20時から深夜0時20分まで、土休日は17時から21時20分まで、新宿発京王八王子行きと橋本行きがそれぞれ毎時1本ずつ、計10本が運転される。

「京王ライナー」の5000系(撮影:久保田 敦)

最初の停車駅は八王子行きが府中、橋本行きが多摩ニュータウンの京王永山で、以遠は一般の特急と同等になる。

新宿駅ホームは主たる特急・準特急が発着する3番線と区別して2番線。入線にあたりライナーの5000系(かつての名高い5000系に対して新5000系とも称する)はホーム手前、中ほど、終端部と計3回、メロディホーンを鳴らす。それが地下駅構内に響き、大いなる宣伝になる。乗車は各車4ドアのうち両端2カ所ずつ。発車までのひととき、車内に静かな音楽が流れている。趣向を凝らした演出の1つである。

料金は400円で、改札内の専用券売機かWEBの「京王チケットレスサービス」で座席指定券を購入する。平日の通勤客はスマートホンでの購入を当然とするので駅での購入は少なく、満席でない土休日のほうが券売機に並ぶ列ができる。券売機で購入する券はJRの発券機サイズ。券面にやはりQRコードが入っているが、乗車に際して特段のチェックはない。だが、飛び乗って座席指定券を車内で求めると300円が加算されて一気に700円となる。それとあって警備の係員が「指定券がない方はご乗車になれません」と連呼している。

コンセント付きで品格ある座席だが…

新5000系は、京王においては今までにない指定席車両として、先頭車を流線形にするとともに車内にも格段の力を注いだことがうかがえる。通勤仕様ながらブラウンやゴールドの色遣いで、室内灯は飴色に調光できる間接照明。最新の接客設備として座席コンセントも銘々ぶん取り付け、発車直後に聞く車内放送は「短い時間ですがゆっくりお寛ぎください」と応接の言葉で結ばれた。

京王にも以前から座席指定列車のアイデアはあったようだが、起終点間40kmに満たない路線ゆえ、現実化の気運は乏しかった。しかし、多摩ニュータウン地区で競合する小田急が複々線完成を機に攻めの姿勢を打ち出し、京王も従来と違った魅力を発する必要があった。その思惑は、ライナーの乗車率を見ていると当たったようだ。これならば昼間に高尾山直通列車を設定しても受け入れられそうで、もう少し本格的な特急車でもよかったか、と思えてくる。

と言うのも、基本は通勤車であり、着席しての視界が手摺に仕切りに吊手に広告……と騒々しい。ライナーに使う限り閉め切ったドア付近の空間はもったいないし、戸袋窓がない車体構造ゆえにドア脇の席は窓がなく、仕切りで足元も狭い。端部の席は肘掛付きとは言えロングシートの配置で、3人連れで券を買うと自動的にその部分を充てられるため、親子連れのややがっかりした様子も見られるからだ。

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