首都圏「私鉄通勤ライナー」群雄割拠の時代に 運賃、座席、乗り比べてわかった各社の戦略

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2面4線の駅のため列車は早めに入線でき、ドアは各車後方1カ所だけを開く。集団は対面に到着する電車に吸い込まれ、S-Trainへは三々五々だった。

有楽町線内は有楽町と飯田橋に停車するが、放送は「次は石神井公園です。有楽町(または飯田橋)に停まりますが乗車専用駅のため、お降りになれません」と告げている。その一方「お座席の向きを変える時は腰掛下のペダルを踏んで」と「トイレは4号車」の案内には、なるほどと思う。土休日の横浜・中華街~西武秩父間2時間オーバーを走り抜く行楽列車としては不可欠な準備なのである。

有楽町線には先行列車を追い抜ける駅はなく、銀座一丁目や永田町といった、主要駅の雑踏がゆるゆると流れてゆく。そのホームとは対照的に、車内は飯田橋の時点で窓側が埋まったものの、通路側や車端のロングシート部分は空席が目立つ。満席には遠い乗り具合だった。元来が急曲線の多い地下鉄で各駅停車との平行ダイヤだから、速達性は期待できない。そこに合算料金でワンコインに収まらない面も加わり、利用者の判断はシビアなようだ。

支線直通で満席の拝島ライナー

池袋は先行列車の長い停車を待って手前で足踏み、なおさらゆっくり通過した。池袋はターミナルだが、そこからなら西武線に乗ればよいので、S-Trainは通過する。その一方で西武有楽町線へと入る小竹向原は乗務員交代で、次の練馬は地下鉄と西武の地上線の信号システム切り替えのために運転停車を重ねる。西武池袋線の高架複々線に入って初めてスピードに乗った。

「S-Train」に続き新設された「拝島ライナー」(撮影:久保田 敦)

西武線内は石神井公園と保谷に停車するが、この両駅は降車専用とされ、一般列車には転じない。急行通過駅の保谷を停車と定めたのも独特な選定だが、各駅に停車する準急に接続した。いくつか特殊性が感じられるS-Trainである。終点の所沢では飯能行きに接続した。

西武鉄道はS-Trainから1年後の2018年3月、40000系の車両増備を機に西武新宿線で、拝島線直通「拝島ライナー」も運転を開始した。平日、土休日とも18時15分から22時15分まで毎時1本、計5本を運転。本川越行き特急レッドアローの「小江戸」も30分間隔で運転され、まさに並び立つ。西武新宿の次に乗車専用駅として高田馬場に停車する。

高田馬場の次は新宿線から拝島線に分かれる小平で、以遠は拝島まで一般列車として各駅に停車してゆく。本線系の「小江戸」も快適な30~40分を過ごせる列車として実績を見せる中、車両のスペックは違えど支線に乗り換えなしで速達できる列車とあって、人気を得ている。ほぼ満席のまま拝島線に入り、玉川上水からさらに西武立川や拝島方面へと乗り続ける人も大勢であった。

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