酔えば球場も近い?西武「ビール特急」の挑戦 「遠い」ドーム集客へ、ライオンズと連携強化

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一方、試合開始に間に合う運行を求める声に対しては、「まず今回の施策に対する振り返りを行う必要があるが、平日ナイターの試合開始に間に合う時間帯だと乗車人数の面で不安があるのに対して、土休日の試合であれば検討の余地はあると思う」との考えを示す。

ライオンズファンらで埋め尽くされたメットライフドーム(筆者撮影)

メットライフドーム来場者のうち西武線利用者の割合は6~7割であるが、メットライフド
ームの入場者数の増加により、西武線の乗車人員の増加と西武鉄道の増収につなげることができる。

2017年シーズンのメットライフドームでの公式戦試合数(セ・パ交流戦含む)の総入場者数は約159万人。現状では土休日に比べると少ない平日の観客動員数を増やして、西武線の乗車人員増を実現できる余地は大きい。

筆者の試算ではあるが、平均値として西武線利用者を65%と仮定して計算すると、利用者数は約103万人となる。これらの人が所沢駅―西武球場前駅間のIC運賃174円で往復したのと同程度の収入が西武鉄道に入ってくると想定した場合、約3.6億円の増収効果となる。

実際には池袋・西武新宿・本川越・国分寺・飯能・西武秩父方面などとの間の運賃収入と、メットライフドーム試合開催日に運行される臨時特急「スタジアムエクスプレス号(ドーム号)」の特急料金収入が0.2億円程度入ることから、実際の増収効果は4億円を超えると予想される。

来場者増へ地下鉄直通増発を

確かにメットライフドームは東京都心からは離れているが、地下鉄副都心線・東急東横線および有楽町線からの直通列車を増やすことで、西武線のさらなる利用促進と球場来場者の両方の増加に結び付けることも不可能ではない。

メットライフドームが西武球場前駅の目の前に立地するという大きな強みをさらに高めるためには、利便性の高い列車を運行することがカギを握る。現状では試合開催時に特急レッドアローによる「スタジアムエクスプレス(ドーム号)」が1往復運行されているが、地下鉄方面への座席指定列車の運行を求める意見もある。

鉄道の観光輸送の実態に詳しい崎本武志・江戸川大学教授(観光学)は「都内および横浜方面と西武球場前駅の間で直通列車による着席サービスを提供することで、西武線とライオンズのさらなるイメージアップが期待できる」と話す。東京地下鉄・東京急行電鉄などとの調整が必要になるが、検討の余地は十分にある。

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