お堅い「町の総合計画」が絵本で大反響のワケ

福岡県の水巻町「水巻未来図鑑」の中身とは?

大人はもちろん子どもも興味を持ち、読んでもらえるように作られた「水巻未来図鑑」の表紙(イラスト:水巻町総合計画HPより)

 地方自治体において、まちづくりを進めるための基礎となる「総合計画」。まちの将来像と、それを目指すための施策を総合的にまとめたものだ。一般的に総合計画は10年ごとに改定されて冊子になる。だが、住民が目にする機会はほとんどないだろう。

そんな中、福岡県の水巻町(みずまきまち)がユニークな総合計画を作り、話題を集めている。水巻町は、福岡県北九州市に隣接する人口2万8000人ほどのまち。かつては鉱工業が盛んだったが、今は緩やかに人口が減少している。2018年4月に発表した総合計画のタイトルは「水巻未来図鑑」。

カラフルなイラストと町民の声を散りばめた、まるで絵本のようなつくりだ。なぜこんなスタイルになったのだろうか。

水巻町の美浦喜明町長は、30年にわたり町議会議員を務め、町長になって5年目だ。

美浦喜明町長(左)と小宮順一教育長は水巻町出身で、高校の先輩と後輩。ふたりとも町のPRポロシャツを着て、積極的に外に出ている(筆者撮影)

「総合計画といえば、町長のあいさつと顔写真から議長あいさつ、基本構想、基本計画など、どの自治体でもほぼ同じパターン……。

私は、従来の総合計画を作るなら、その予算を福祉などに回したほうがいいと思い、どうせ作るならまったく新しい形にしたかった」と打ち明ける。

委託業者の選定にあたっては、総合計画を手掛けたことのない会社をあえて選定した。

町の焼肉屋で定まった総合計画の方向性

2016年12月の夜、町内にある安くておいしい焼肉屋に、町長と副町長、職員、委託先の担当者など9人が集結した。もちろん全員が自腹。総合計画を作った経験のある人は、いない。ゼロからのスタートだった。

町長を中心にざっくばらんに思いを交わし、「水巻を“いいね”と言われる町にしたい」「とにかく町民の声を聞こう」「子どもたちにも読んでほしい」という方向性が定まった。

「水巻未来図鑑」ができるまでのストーリーを紙にまとめて共有した(写真:福岡県遠賀郡水巻町提供)

“子ども”がキーワードにあがったのは、美浦町長が教育に力を入れてきた背景がある。町内7つの小中学校に約2000人の子どもが在籍しており、3年前、元小学校長の小宮順一さんを教育長に抜擢。

小宮教育長は「教育は未来に向かう営み。子どもが健全に育つには学校教育だけでは十分でなく、町民みなさんの力をお借りしたくて『みんなで育てよう 水巻のこども』というビジョンを掲げました。

すべての小中学校で年3回ずつ、教職員や保護者、地域住民、行政職員も一緒に対話の場を設けたり、子どもと地域住民がそれぞれ円になって順番に話すトークフォークダンスなどもやっています。継続的に対話をしていくことで、必ずいい町になると信じています」と力を込める。

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