お堅い「町の総合計画」が絵本で大反響のワケ 福岡県の水巻町「水巻未来図鑑」の中身とは?

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ただ、職員には気掛かりなことが残っていた。絵本形式で、しかも町長が登場するのは最終ページの小さなコメントのみ。そんな計画書を町長は了承してくれるのか。「年明けに町長に話すと、『うまくいかんやったら、やり直せばよかろうもん。チャレンジやろうが』と受け止めてもらい、その言葉に救われました」としみじみ話す服部さん。

総合計画を担当した企画財政課の篠村潔課長(左)、小樋赳郎主任(中)、服部達也課長補佐(筆者撮影)

美浦町長は「失敗を恐れていたら、新しいことはできない。行政マンなら従来どおりの計画書でうまく収めることができるのに、あえてチャレンジしたんです。もし評価が悪かったら、数年後にやり直せばいいじゃないですか。私が載るのは、最後に目を凝らさないと見えないくらい小さな文字で十分」と大らかに笑う。

2018年4月発行の「水巻未来図鑑」は、公共施設や小中学校に配布し、町のホームページでも公開している。全64ページのオールカラーで、ある親子のもとに「水巻未来図鑑」が届き、小人が現れて、水巻町の未来について一緒に考えていくストーリーだ。

町民のつぶやきが満載で、クスッと笑ってしまうようなコメントもあり、町が目指す5つの方針がわかりやすく提示されている。

町民のつぶやきは良いことも悪いことも載せた

服部さんは「皆さんのつぶやきは、マイナスの意見も隠さずに載せました。最終的に絵本のようになり自分たちも驚いたけれど(笑)、町民全員で共有できるビジョンが形になった。町民の方々には好評で、今は全国の自治体から問い合わせがあります。今後どう活用していくかがとても重要」と表情を引き締める。

総合計画審議会の委員は、学識経験者や議員、PTAの女性2人などで構成(写真:水巻町提供)

小宮教育長は「いろいろな会合で未来図鑑を紹介しています。ページには問いや空白があり、皆さんが思いを自由に書き込めるようになっています。問いについて、町民の皆さんと対話を続けていきたい」と話す。

最後に、美浦町長はこう語った。

「子どもから高齢者まで、たくさんの町の方の意見をもとに総合計画が完成しました。この声こそがいちばんの宝。行政が考えた計画に町民を当てはめるのではなく、町民の生の声を聞き、皆さんが主役のまちづくりを進めたい。この総合計画を町民の皆さんに読んでもらえるように働きかけて、“チーム水巻”として共に考え挑戦してもらうことで、未来図鑑で描いた理想の町を実現していきます」

佐々木 恵美 フリーライター・エディター

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ささき えみ / Emi Sasaki

福岡市出身。九州大学教育学部を卒業後、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、国連や行政機関の報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人や経営者をはじめ、様々な人たちを取材。

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