医師の適性は「スネ夫をどう思うか」でわかる 面接試験は猛勉強の果てにある「最後の関門」

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横浜市立大では「我が国の食料自給率について考えを述べなさい」という出題があった。同大学では例年、資料や課題文はなく、設問文のみの出題がされている。食料自給率は、農林水産省発表の最新データ(2017年度)では「生産額ベースで65%、カロリーベースで38%」である。具体的な数字を知っているに越したことはないだろうが、仮に「知らなくてもどう解答するか」が大きなポイントだ。

つまり、各設問に関する知識の有無よりも、「論理的思考力」「表現力」、また「対応力」が試されているのだ。資料や課題文のない大学の場合は、自分の力で「論点を明確化」したうえで「自らの意見や改善案を展開」する能力が必要となる。また、医療現場で物資が足りないなどの「不測の事態への対応力」にも結び付くだろう。

それでは小論文の対策法について説明していく。

医学部が小論文試験を実施する狙いは、学科試験では測りきれない「医師の資質と適性」や「状況判断能力」なども判定することだ。解答の方向性としては、「ポジティブで生産的」なものとするのがよい。そのような素養は「人の病と向き合う」医師にとって必要不可欠であり、もしそれが欠けていれば患者は医師を信頼できず、安心して命を預けられない。

また、解答は単に「感想で終わる」ことなく、自分なりの「意見や改善案を表現する」とよい。さらに、無条件に医療系のトピックを絡めて論述しないこと、つまり、ただの「マニュアル人間とならない」ことも大切だ。

たとえば、「研修医時代の当直」の場面などを想像してみよう。医療現場は思いもよらない事態の連続で、「マニュアルなどあってないような場面」に必ず遭遇するだろう。そのようなとき「危機管理能力」が絶対に必要となるので、医学部入試はまさしく「医療現場の実習」と言えるのだ。

具体的な対策としてはニュースを読む、読書する。内容を要約する、自分の意見を表現するなどが定番であり、「添削指導」も不可欠だ。また、さまざまな経験をして「引き出しを増やす」のが、「状況判断能力」「危機管理能力」につながることも加えておこう。以前の回でも説明した通り、各大学の出題内容・傾向は早めに熟知して必要な対策をしていこう。

面接の新トレンドMMI

「面接試験の評価により医師としての適性を欠くと判断された場合は、学科試験の成績にかかわらず不合格とする」。かなりインパクトのある表現だが、このような文言が「各大学の募集要項で明記」されている。面接が点数化されているか否か、配点が何点かにかかわらず、面接が「極めて重要」であることを物語っているとわかるはずだ。大学がほしいのは「偏差値が高い学生ではなく、医師にふさわしい学生」である。

形式については、従来の「個人」「集団」「討論」型に加えて、複数の課題を用いる「MMI(Multiple Mini Interview)」型もある。この方式は2017年度入試から東京慈恵会医科大と藤田保健衛生大が実施するなど、徐々にではあるが採用大学も増えている。

これは「1対1の対話方式で5~10分程度の面接を複数回行う」というものだ。このタイプは従来の紋切り型の面接ではなく、「受験生の本質を丁寧に判定する」ために行われるため、「事前の練習やうわべのテクニックだけでは通用しない」形式である。一般入試においては、国立の東北・千葉大、私立の東邦・東京慈恵会医科・藤田保健衛生大が同様の方式を採用している。

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