「世界一のAI強国」目指す中国のアキレス腱 「中国製造2025」でAI技術注力を明言

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1つ目のアキレス腱として挙げられるのは、国内の地場AIチップ企業の育成が遅れていることだ。AIチップは演算処理を高速化する半導体チップであり、画像認識や音声認識をメインとした演算処理に欠かせない存在である。世界AIチップ企業のランキングを見ると、エヌビディアやインテルなどアメリカの企業が上位6位を占め、中国のHUAWEI(華為)は第12位にとどまる。

また、中国企業の半導体チップの生産額は世界全体の4%に過ぎず、中国は半導体チップを輸入に頼っている。17年の半導体チップの輸入額は2600億ドルを記録し、ガソリンを抜き中国最大の輸入品目となった。

2つ目はAI人材の供給が不足していることだ。中国はアメリカに次ぐ第2位のAI人材を有しているが、優秀な人材はアメリカの5分の1に過ぎず、特に海外で経験を積んだ人材は不足している。

また、AIベンチャーの創業が盛んになるなか、中堅・中小企業を含むAI企業同士の人材争奪戦が見られ、それが人件費の高騰につながっている。実際、2017年の中国AI業界の平均月給は2万5000元(約40万円)と製造業の平均を大きく上回る水準となり、特に自動運転分野では、その平均月給は4万1000元(約66万円)を超えた(テンセント研究院「2017世界AI人材白書」)。

3つ目は、AI理論研究において中国の研究機関や国内地場企業の国際的な影響力が限定的なことである。AIに関する論文の質及び影響力を反映する被引用件数を見ると、世界トップ20機関に中国科学院(第3位)と清華大学(第9位)がランクインするにとどまった(日本経済新聞とエルゼビア調べ)。また、企業別のAI特許保有件数では、国家電網(中国最大の国有電力輸送企業)が意外にも第3位につけたが、IT大手の百度は日米欧企業に大差をつけられた。

アリババなど大手がAI企業60社に出資

18年6月末時点で中国のAI企業は1011社あり、これはアメリカの2028社に次ぐ世界第2位である。コンピュータビジョン、ロボット、自動音声、自動運転が中国AI企業の主な事業分野だ。BATと呼ばれる中国IT大手3社(百度、アリババ、テンセント)が、海外企業を含む AI関連企業約60社に投資し、商湯科技や寒武紀科技など中国AIユニコーン企業の大半を傘下に収めた。

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