達成は競争に勝つことでしか手に入れられませんから、逸脱のほうが多くの男性にとっては実現することが容易です。その中でも、他人に迷惑をかける言動は、最も簡単に「男らしさ」を証明する手段だといえます。道端で肩が触れただけでいちゃもんをつけるような、かつてのヤンキーなどはその典型です。中学生ならともかく、大人の男性であれば逸脱による「男らしさ」の証明は恥ずかしいと思ってもらいたいところです。
しかし現実は違います。たとえば、電車内で足を踏まれただけなのに、「お前、次の駅で降りろ!」と怒鳴り、降りた駅のホームでつかみかかる男性を見たことがないでしょうか。残念ながら、中高年男性による逸脱行為は電車内に限らず、どこでも見られるものです。
自分が社会的に成功できなかった不満を、他人に攻撃的な態度を取ることで解消している男性は少なくありません。
この手の男性に出会ってしまった場合は、かかわらないようにするのが最善策です。その際に、「俺は逃げた」などと後ろめたく思う必要はありません。問題を大きくして他人の迷惑にならないために、そして、何より自分自身を守るために、多くの男性がそうした「男らしさ」から解放される必要があります。
「体育会系」に限った話ではない
さて、タチが悪いのは、ご質問のように社会的な地位を獲得しているにもかかわらず、粗暴な振る舞いをする男性たちです。確かに、最近はスポーツ界で注目される出来事が立て続けに起こりましたが、この問題はいわゆる「体育会系」に限った話ではありません。政治の世界に目を向ければ、記者の質問にまったく答えなかったり、恫喝したりする男性の政治家はいくらでもいます。
そもそも、企業でパワハラが起きているのは、権力を手に入れたからといって男性が乱暴な言動を取らなくなるわけではないからでしょう。上司がこのタイプであれば、電車内で偶然出会ってしまった男性とは異なり、避けることができないので最悪です。
すでに確認したように、社会的に認められた価値を実現できなかった男性は、逸脱によって「男らしさ」を証明しようとする傾向があります。「傾向」と書いたのは、競争から降りて、穏やかに生活している男性もいるからです。趣味でも家族でもいいですが、既存の「男らしさ」とは別の価値を見いだせれば、達成できないからといって逸脱に走る必要はありません。
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