就活指針廃止でも「解禁日」はなくならない 経団連撤退なら、別なルールが設定される

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とはいえ就職情報会社が企業の選考や内定出しのタイミングまで拘束することは難しい。人材紹介会社を活用した採用や、企業側からの逆求人など就活も多様化しており、サイトの更新だけで企業や学生の高度をコントロールできるか、わからない。

政府が「新規大学卒業予定者等の就職・採用活動開始時期について」という表題で経済団体に要請している文書 (首相官邸ホームページより)

2つめは文科省や厚労省などが採用活動について”介入”してくる可能性だ。

当然、憲法では職業選択の自由が定められているため、政府が規制することは難しい。ただ、今でも経団連が決めた指針の日程を踏襲しているとはいえ、政府が経済界に対して採用活動のスケジュールを守るように要請している事実がある。

政府としては、引き続き企業が自主的にルールを設定してもらいたいのが本音だろうが、企業側がまったく日程を決めなくなれば、勉強に専念する環境を整えたい大学側の意向を踏まえ、日程を決めて、引き続き「要請」を出したり、「ガイドライン」といった形で目安を設定するかもしれない。

3つめとして、大学の団体や協会が独自に、「企業へのお願い」という形で、目安を設定することも考えられる。大学との関係を維持したい企業側がそれに応じることもあるだろう。

当事者の大学生は翻弄されるばかりで不安

結局、こうした大人たちの議論に翻弄され、戸惑いを感じているのは、渦中にいる2021年卒採用以降の大学生だ。神奈川県内の大学に通う経済学部2年の女子学生は、「早くなるかもしれないという噂があったが、就活指針廃止の話を聞いて、今後どうなるんだろうという気持ちになっている」と、不安な気持ちを隠せずにいた。

「長期的には自由化に向かう流れなのかもしれないが、もう半年後には大学2年生の就職ガイダンスも始まり、就活について考える時期に入る。急激な変更は、学生にとって負担になる」と、文化放送キャリアパートナーズの平野恵子主任研究員は懸念を示す。

経団連が就活で投げかけた波紋。いずれにしても大事なのは、関係者が目先の利害のみで動かず、学生が不安なく学業と就活に打ち込める環境を最優先で決めることではないか。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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